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食いっぷりショー

 会社に食いっぷりのいい同僚がいる。仮に名前を腹田、腹田俊彦としよう。

 彼と牛丼を食べに行った。まず、並二丁というチョイスセンスに電流が走った。曰く、特盛り一丁よりもパフォーマンスが高いのだそうだ。小食キャラで売っている私には100パーありえない選択肢。その「ありえなオーダー」を貪るように食う、いや、喰らっている。その姿を眺めながら私は思った。ここはサバンナかと。弱肉強食の世界かと。

 その一方で、「胸のすく食いっぷりやわあ」。そんな肝っ玉かあさんライクな心理にもなっていた。「おかわり言うてや!」。しゃもじ片手にスタンバっていたい。この食いっぷりをもっと眺めてたい。目を細めて微笑んでいたい。そうか! 私は気づいた。これはエンターテインメントなのだと。「金の取れる食いっぷり」なのだと。

 これをなんとかショービジネスとして成立させる方法はないか。逡巡の末、バチン!脳内に閃光が走った。彼に、牛丼を食いながらテーブル間を練り歩いてもらってはどうか。ディナーショーである。「腹田俊彦ディナーショー」である。普通のディナーショーはタレントの歌や踊りを鑑賞しつつ客が食事をとる。が、「腹田俊彦ディナーショー」は彼自身が食事を取る。いわずもがな、彼の食いっぷりが歌や踊りに勝るとも劣らないエンターテインメントだからだ。コンセプトは、「アラ還をターゲットにした子育ての追体験」。

 各テーブルには、おひつと寸胴が用意され、気持ちのいい食いっぷりに刺激されたアラ還たちがほっかほかの白飯やつゆだくの牛肉、時には紅しょうがを給仕する。彼の周囲は「アタシが!次はアタシが!」で揉みくしゃだ。胸の前で手を合わせ、見惚れるだけのご婦人もいるだろう。ちなみにこのディナーショー、彼女たちに食事はない。そして、彼女たちもそれを望んではいない。なぜなら彼の食いっぷりを観ること、そして給仕することで、彼女たちの胸は満たされているのだから。

 

七三日記(0413)

■夜、食器を洗いながら、ものすごくか細くてそして長い、聞き耳を立てなければ聞こえないくらいの屁をしたら、廊下で寝ていた猫がビクッと起き上がってガラス越し、闇夜に向かってニャーと鳴いた。どうやらオレのした屁が、雌猫の鳴き声に聞こえたらしい。■屁で声帯模写、いや違う、これはなんて呼べばいいのか、屁帯模写? 肛門模写? というかそもそも声帯模写とは、声帯「で」模写するのか、声帯「を」模写するのか。そのスタンスが曖昧なまま、安易に「肛門模写」などと呼んでしまっては赤っ恥をかくことになる。しかしインターネットをフル活用しても、その答えは導き出なかった。■猫が風呂場の小窓から先を急ぐようにひゅいっと、弧を描いて出掛けた。雌猫なんていないのに。■会社の先輩Yさんが女の子を紹介してくれるという。ニャー! なんでも前職の知人女性Mさんからの紹介だそうで、図式としては、オレ→Yさん→Mさん→女の子である。■割と近くに住んでいる。愛想がよい。太ってはいないが中肉中背である。はっきり分からないが26歳くらいである。などの情報を得、そこそこにテンションが上がる。■こちらサイドからも、身長170センチ弱・体型スリム、くだらない妄想を内に秘めた35歳。などの情報を提供し、一旦、向こうサイドの反応を待った。付き合うかどうかなんてのは別問題として、一回みんなで飲みいこうか。なんて談笑しながら。■翌日、Yさんは言った。「昨日の子、22歳なんだって。で、35歳はちょっと、だってよ」■おーいカァさん!ちゃぶ台持ってきてー、ひっくり返すから!■誰も悪くない。そう、誰も悪くない。私のために奔走してくれたYさんMさん相手の男が35歳だと聞かされた22歳の女の子。そう、誰も悪くない。一個人のために見せてくれたYさんMさんの素晴らしい連携プレイには頭が下がるばかりだし、自分が女だったとしても干支が一周以上しちゃってる男を押しつけられるなんてまっぴらごめんだし。だから、そう、誰も悪くない。■しかしそうは言ってもやね、切れ味の悪い包丁でギコギコ切られたみたいにオレは傷ついたし、辛くて酸っぱい現実を味わわされてすごく悲しい気分になった。善意×善意イコール無邪気な悪意。■オレはその夜、机の上の小窓に向かって先を急ぐようにぴゅっと、短い放物線を描いた。

はじまりはいつも駄目

「これ、気づきました?」席に着くなり、冷たい頬を赤く染めたまま彼女は、その長い髪を小さくつまんで照れまじりに笑った。大きな不整脈が一発、体内を駆け巡り、ぐわんと世界が、揺れた。ボクは、彼女の、そのあまりのかわいさに何食わぬ顔で身悶えたのだった。 (2009年1月1日付 『matohazureの前頭葉でコンニチハ!』より抜粋)


***

 2008年を振り返る記事を書くつもりだったのですが、山崎VSモリマン対決と笑ってはいけない新聞記者を惰性ぶっ続け鑑賞しているうちに新しい年に、ピカピカの2009年に、変わってしまっていましたー。ガフ!。

 ガフ!って一体どういう感情表現なのでしょうか。しかしまー、なにもしてないに等しい休暇がちゃくちゃくと経過してゆき、得も言われぬ焦りが雨後の竹の子のようにぐんぐんと育っております。一切、養分など与えてなどいないのに。報告です。休み中に読破しようと目論んでいた600ページの小説ですが、現在の進捗、64ページとなっております。自分の部屋はある意味シャングリラでありますから、読書に一点集中など出来るわけが、土台、ないのです。

 元旦は、会社の女の子と食事をしました。エクステをつけロングヘアへと生まれ変わった彼女。そのかわいさに私は悶えました。ちなみに私は彼女のことを好きなのですが、「かなり小規模な会社での社内恋愛から類推されるリスク」で我が身をガチガチに縛り付けておりました。そしてさらに「彼女を好きにならない魔法」を自分自身にかけておりました。ボクは、キミのことなんてなんとも思っちゃいないんだ! そんなふうに・・・。そしていま「キモイ思いにさせる魔法」をみなさんにかけました。一生解けません。

 小洒落たイタリアンの店でピザとパスタを上の空で食べた後、近くの神社に行っておみくじを引きました。大吉を引いた彼女は猿かなにかのようにキャッキャはしゃいでおりました。私は小吉でした。そして彼女と別れてからの帰り道。気づくと普段、80オーバーで飛ばしているバイパスを、私は50キロで走行していました。顔がすこぶるブルブル震えるレベルの後悔により、運転への集中力が7パーセント前後まで低迷していたのが原因です。私の引いたおみくじの恋愛・縁談の項目にはこう記されていました。「相手に伝えるべきこと、言いたいことなどは、積極的に話すべき」と。

 どうして、言わなかったんだろう。どうして好きだって伝えなかったんだろう。脳裏をよぎる彼女へのさまざまな思い。地団駄を踏むとはまさにこのこと。私は、自分の不甲斐なさに頭から湯気を立てながら、そして意気地のなさにしょげ返りながら、ゆるい勃起を維持しつつ夜の国道をただひたすらまっすぐに走り続けたのでした。ガフ!

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 そんなわけですので、今年もどうぞよろしくお願いします。やさしくしてください。


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