あったか灯油


あったか灯油

また揚げ足取りかよと思うかもしれないが敢えて言いたい。このノボリ、気持ちは分かる。分かるけどなんか違う。なんだなんだ?なにが違う? そう、これじゃまるで灯油自体に温度があるかのようではないか。ブリキの湯たんぽや金属のウイスキー入れを小脇に抱えてスタンドに列をなし、満タンになったそれを、ある者は布団に潜らせ「あったかー」と夢心地、ある者は携帯カイロのように懐に忍ばせ「ぬっくぬくやわぁ」と街を闊歩。俺のポテンシャルをなめるな! 灯油が唾を飛ばす。曰く、『あったか。なんてヌルいキャッチじゃ燃えてらんない』のだそうだ。ではどんなキャッチを?と問えば『火だるま灯油。くらいやってくんないと』と口を尖らせる。そりゃそうだろう。燃えることが彼らの人生のすべてなのである。