たのしい登山

男：勅使河原洋一郎
女：ヒカル

　ひと雨くるぞ

　こんなお天気なのに？

　山の天気は変わりやすい、ってな

　洋一郎さんて物知りなのね

　んなこたないさ

　頼りになるワ

　ほうら、さっそく来なすった

　きゃー

　空が泣きなすった

　洋一郎さんて、詩人ね

　あすこに山小屋があるぞ

　渡りに船ね

　渡哲也は大門さ

　やだ洋一郎さんたら

　こんな時こそユーモアを、ってね

　ウィットが利いてるわ

　ヒカルくん。さ、走ろう！

　ま、待ってよ！

　ふー、ずぶ濡れだ

　ちょっと濡れたわね

　いやー、まったくもっての濡れ鼠だよ

　ヒカルはそれほどでもないわ

　脱いで

　え？

　洋服を乾かそう

　風邪ひいちゃうから

　あ、暖炉がある

　薪もあるよ

　もう安心だ

　なにをぶつぶつ言ってるの？

　ほら脱いで

　早くしないと

　あ、ボクが先に脱ぐ？

　そうだよね、そのほうがいいよね

　ちょ、ちょっと勅使河原さん

　まって、脱ぐから

　ね、ね、勅使河原さんってば！

　いったいなんだって言うのさ！？

　お願いがあるの、勅使河原さん

　なんで急に苗字で呼ぶの？

　･･･むこう向いててほしいの

　あっ、ごめんごめん

　絶対見ないで！　じゃないとキライよ

　わ、わかったよ

　ねねね、いま、ぬ、脱いでるのかい？

　もう脱いだのかい？

　もういいかい？　いいのかい？

　もう、一糸纏わぬ姿、なのかい？

　･･･いいわ、こっちを向いて

　行くよ、ヒ、ヒカルくん！！

　･･･なんなの？　それ

　ラビットのビニール合羽よ

　な！

　ヒカル、これで下山するわ

　え！？

　
ナレーション
　持っててよかった。
　安心ビニールで山小屋いらずの「ラビットのビニール合羽」
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　ホント、頼りになるワ

　ねえ、ボクはどうなっちゃうの？

　じゃあねー、勅使河原さん

　ええー、そりゃないよー、ヒカルちゃーん

　あと、なんで苗字で呼ぶんだよー

　
ナレーション
　ビニールを通して明日を見つめる。角倉工業株式会社