あてこすり(改)


 
 えー、新聞によりますと今年一年を表す漢字は「偽」なんだそうで、牛肉やら和菓子やらハンバーガーやらドーナツやら白いお土産やら、えー、あとは何がありましたっけねえ、嘘偽りなくすべて教えてくださいな、てな具合に指折り数えるのも億劫なほどにたんまりと明るみに出たわけでありますが、酒好きの私としましては、なによりも鶏肉の偽装ってやつに眉を寄せた次第でありまして。

 「主人、燗でひとつ」
 「へい」
 「あと、盛り合わせね」
 「タレと塩、どちらで?」
 「そしたら半々で」
 「かしこまりました」
 「時に主人」
 「へえ、なんでしょう」
 「ここのはどこ産だい?」
 「えー、比内鶏でございます」
 「ぬぬ、まさか偽装じゃあるまいね」
 「そんなダンナ滅相もない」
 「近頃、疑り深くなってしょうがねえ」
 「へい、盛り合わせおまちどう」
 「たとえばこの、皮」
 「皮がどうしました?」
 「・・・主人の皮じゃあるまいね」
 「え?」
 「偽装してるんじゃあるまいね」
 「ダンナまたまた冗談を」
 「冗談なんか言わないね」
 「アタシ10年前に手術してますから」
 「ほう、どこで?」
 「高須でございます」
 「ほっ、定番だねえ」
 「レーザーでございます」
 「それじゃあさぞかし立派なムスコさんをお持ちだ」
 「へ、へえ」
 「いずれ風呂で拝ませてもらうからね」
 「へえ、いや、それが」
 「どうしたんだい?」
 「一人遊びが過ぎたのかまたまた伸びてしまいまして」
 「そりゃまたどうして?」
 「それがまったくモテませんで」
 「ありゃりゃ」
 「それで夜な夜な自分で独り占めを」
 「そりゃあ伸びるわけだ」
 「こればっかりはどうにも誤魔化せません」

これがホントの皮肉というわけで。