さよならマッチ


 

マッチ01

「あ、あ、あ、オホン、ま、毎度御来店有難う御座います」

そうか、ちょっとカタいか。だよな漢字びっしりだしな。ベンチに腰掛けながら言うセリフじゃないしな。だけどな、こういうスタイルもアリじゃないか? だってよ、シャレてると思わない? 大地の青とベンチの赤のコントラストとか。後ろの木だって不自然な枝分かれしてるけどよ、こう、だんだん黒ずんでく様がいい雰囲気出てんだろ? なんかこう、寂しい気分になってくるし。……それとな、気づいたことねえか? いや、そんなにキョロキョロしなくたって分かんだろ。どこ見てんだほらほら。オイ! 目ン玉ついてんのか? そっ、そっそっそっ! そうなんだよ、ちゃんとコーディネートしてんだよ、合わせて来てんだよネクタイをよ。やっぱしコーディーネートはこうでねえとな。うわあ、ってなんだよ。寒いってどういうことだよ。そういう、そういうお前はなんだよ、全身まるごとイトーヨーカドーファッションだろ? ……そうか、ズバリだったのか。すまん。ホラ、仲直りの握手。でもな、なんていうかあれだ。こうやっていつまでもオマエと話していられる訳じゃ、ねえんだよな。なんでって、それは俺が決めることじゃねえ。いや、意味分かんないって言われてもな。分かった分かった分かったから。そうギャンギャンわめくなって。ひっくり返してみろよ、そしたら意味が分かるんじゃねえか?

マッチ02

まあそういうことだ。
あとしばらくしたら、あばよ、だな。

ボクたちの約束


旅に出ようと彼女は言った。
ドラゴンボールを集める旅へ。
今度一緒に。彼女は言った。

うん、出よう。ボクは言った。
両手いっぱいの勇気を連れて、
心配事は置き去りにして、
黄色いカッパを身に着けて、
方位磁石をぶら下げて、
いつもの靴を履いたら、
手をつないで旅に出よう。
そしたらぜんぶあつまったとき、
いっしょに平屋建ての家に住もう。

すると彼女は言った。
庭にはウッドデッキつけて、時々お茶しようね。
すこし笑いながら、そんなふうに言った。