あのー水を差すようで申し訳ないんですが、みんなヘンタイヘンタイって気軽に言うじゃないですか? 「やだーヘンタイ!」とか、そんな感じで。だけど、それって本当の変態じゃないんです。たぶん、たぶんなんですけど、本物の変態を目の前にしたら言葉なんか出てこないと思うんです。本当にひとつの言葉も出てこないと思うんです。『本物には言葉なんていらない』っていやいやそういうカッコイイ感じじゃなくて絶句っていうか、うわー、なにそれどういうこと? って感じで、ドン引き&理解不能に陥って二の句が継げなくなるのが本物の変態なんじゃないかと私は思うんです。
逆に言えば、みなさんの言う変態はあれです。共感なんです。共感。たとえばスカートをめくられて「ヘンターイ」って言うじゃないですか。あれにはですね、「男」=「パンツを見て興奮したい生き物」に対する共感が含まれているんです。その共感を踏まえた上での「ヘンターイ」なんです。つまり共感しているということはですよ、「私もヘンタイでーす」とカミングアウトを、実はしてるんです。知らず知らずのうちに。そしてこれは、めくる側めくられる側のヘンタイポテンシャルが双方、等価であることも意味しているんです。だからうーんそうだなあ、めくる側はこの事実を逆手にとって「ヘンタイって言ったほうがヘンタイなんだぜ!」と言い返すことだって出来る。出来るんです。もひとつ言えば、この二人がドーン!って、曲がり角かなんかで出会い頭にぶつかって中身が入れ替わったとしても、「ヘンタイ」という観点からみたらまったくの同一人物。そういうことになるんです。え? なに? よく分かんないとかじゃなくて、そういうこと、そういうこ・と・な・の!
まあそんなわけで、みなさんが普段使いの「ヘンタイ」は「変態」ではないんです。発音は同じでもカタカナ表記のカジュアルヘンタイなんです。残念ですが。ついでに言うと、酒が入ると全裸になるとか、足の爪の臭いを何度も嗅いでしまうとか、靴下履かせたままじゃないと興奮しないとか、ああいうのはおしなべてカジュアルヘンタイですから。市民権を得て久しいステレオタイプのヘンタイですから。じゃあ本当の意味での変態はどんなのかって言われたらこれ、答えられません。何故なら私自身もカジュアルヘンタイだからです。いや、もしかしたらカジュアルヘンタイでもありません。ド普通人間なんです。いや、これはまじめな話、本当にそうです。何から何まで普通なんです。じゃあこのブログで普通じゃないっぽいことを書いているのは何なんだ思うかもしれませんが、これは、ド普通人間が別の何処かへはみ出してみたくて、必死に手足を伸ばしバタバタ足掻いた涙ぐましい結果なんです。
盗んだパンティーを細かく刻んで笹舟に乗せそっと小川に流し、それを追いかけながらするオナニーじゃないとイケない。
ですから、ド普通人間が必死になって考え得る変態はせいぜいこの程度ですし、そもそもこれは変態じゃなく単なる荒唐無稽です。ああ、なんという無力。
密閉されたケースにカメムシを詰め込んでその匂いを深呼吸。
実際にそういう人がいるらしいと人づてに聞いたとき、その意味を咀嚼することができず黙りこくってしまったのですが、今思えばこのときに、本当の意味での変態をこの人物に感じていたのかもしれません。
みなさんは、本当の変態に出会ったこと、ありますか? それはどんな人でしたか? ニュアンスでも片鱗でもいいから知りたいんです。というわけで、みなさんからの変態情報お待ちしております。いつまでも気長に待っています。そして私はそのあいだ、普通を追求します。変態をより鮮烈に感じたいからです。日々、普通を極め、最終的に「世界でただ一人のド普通人間」を目指します。よろしくお願いします。