信号待ちで隣に止まった白いマーチのお姉さんがキレイだった。まとめ上げた黒い髪に白いうなじ、ピンクのTシャツが眩しく映える。ハンドルを握ってキリリと前方だけを見据える横顔の佇まいに魅了された。そんなお姉さんが、なんとかエクスプレス(うろ覚え)とかいうスカした名前の運送トラックに煽られていた。つかず離れず車体を左右にゆらゆらさせるその様は、頭にネクタイ巻いた酔いどれサラリーマンのセクシャルハラスメントを連想させた。おい! オレのお姉さんになんてことを! と義憤に駆られたが、どうしてあげることも出来ない。悲しい。
煽りが嫌いだ。必死でウンコを我慢している状況で背後に立たれるのと同じくらい嫌いだ。大嫌いだ。うっかりブレーキも踏めないような車間距離にストレスメーターはたちまちレッドゾーンを振り切り、こめかみあたりの血管が弾けそうになる。窓から中指を立てて汚い言葉を叫びたくなる衝動を、これまで幾度となく飲み込んできたことか。
ガラリと話は変わって、路上にはキレイなお姉さんもいるがカッコイイお姉さんも多い。くわえタバコで颯爽と飛ばすお姉さんである。男のくわえタバコよりカッコよく見えてしまうのが不思議だ。くわえタバコの煙で目を細め、左手に携帯電話、さらに右手の内掛けハンドルでばっちり左折をキめたりすると言語道断にカッコイイ。長距離トラックの運ちゃんより断然カッコイイ。いやいや、勘違いしないで欲しいのは、運転しながら吸うなって言ってるんじゃないですからね。ただ、女の子には、そういう種類のカッコよさは必要ないんじゃないかって思うだけです。
さらに話は変わって、キレイなお姉さん、カッコイイお姉さん。それに加えて変わったお姉さんもいる。信号待ちでバナナを食うお姉さんを対向車線に発見したのだった。いや、正確に言うとオバさんで、うーん、これを言うとネタなんじゃないかと思われそうなのだが、そのオバさん、ガッツ石松に似ていたのである。
しかしそれは、バナナというアイテムに古来より備えられている『手にした人すべてにガッツ石松的な要素を付与する能力』のせいかもしれない。NO! だからといって安心するのはよくない。要するにバナナを手にした瞬間、私たちはガッツ化するのである。
試しに、身近な人にバナナを持たせてみたらどうですか。ほら。そんな人の運転でドライブに行きたいですか? 行きたいんですか? バナナ片手に内掛けハンドルなんてもってのほかだし、そもそもバナナを手にした人に運転をさせちゃいけないと思いませんか。運転に説得力がなくなる気がしませんか。
携帯電話もカーナビの操作もバナナも停止してから。県警からのお願いです。