二葉亭四迷は「I LOVE YOU」を「あなたとなら死んでもいい」と訳した。という文章を読んで奥歯がガタガタ言うくらいのショックを受けた。と同時に胸が苦しくなってドキドキがしばらく止まらなくなった。
もし二葉亭四迷が生きていたら、「すげぇよあんた」と絶賛して、近くの定食屋で生姜焼き定食とビールでもおごって、帰りにまるごとバナナをデザートとして握らせたいくらいだ。
なんでこんな訳にしたのか、その意図を知りたくて検索してみたらば、ツルゲーネフの「片恋」を翻訳したときに生まれたとのこと。ツルゲー・・・読んだことねえなあ、と苦手意識に遠い目(白目)をして(剥いて)しまったことは置いといて、ツルゲーネフはロシア人。もちろん英語じゃないので「I LOVE YOU」にあたるロシア語を訳したというのが真相らしい。なんつうややこしい。ついでに言えば、「あなたとなら死んでもいい」以外にも、「死んでもいいわ」と訳したとするサイトもあったりして、情報が少々錯綜。もひとつ言えば、「I LOVE YOU」を日本語に訳したのは二葉亭四迷が初めてで、しかも当時の日本には「貴方を愛しています」という日本語自体がなかったらしい。
どっちにしろ、嫉妬から素手で電話帳を破りたくなるくらいにかっこいい訳なことには変わりなし。例えば手近な翻訳サイトで「I LOVE YOU」を入力してみると「私はあなたを愛しています。」と出た。昼ドラだって、こんな税込み278円くらいの安ゼリフ使わない。確かに間違ってる訳じゃないけど「愛してる」でさえ恥ずかしがって言えないのが日本人なのに、なにをかいわんや。
その証拠に「貴方を愛しています」という日本語がなかったのは、日本人が得意とする回りくどい言い方で愛を伝えてきたからなんじゃないかと。「君の味噌汁が飲みたい」だの「ずっと一緒にいてください」だの「一緒に税金を払って行こう」とか、意地でも「愛」を使わない愛の表現に血道を上げていることからも分かるんじゃなかろうか。
ちなみに、二葉亭四迷を読んだことがあるような無いようなアホ面な私ですが、二葉亭四迷の名前の由来だけは知っている。小説家になろうとする彼に父親が「くたばってしめえ」と怒鳴ったから。というボキャブラ天国みたいな理由。そんな自虐的なセンスが限界まで研ぎ澄まされて、「あなたとなら死んでもいい」をひねり出したんだと思いたい。
明日、本屋で「浮雲」を立ち読みしてみようと思う。