有限会社 西遊記2


 
以前の記事はこちら

登場人物
悟空 悟空
三蔵 三蔵
沙悟浄 沙悟浄
猪八戒 猪八戒

 

悟空 おっしょうさん!助けに来たぜ!

三蔵 おお、悟空!

悟空 おっしょうさん、ケガはねえか?

三蔵 ええ平気です。早く縄をほどいておくれ

悟空 よっしゃ!

三蔵 沙悟浄と猪八戒はどうしました?

悟空 もうすぐ来るんじゃねえかな

三蔵 みんな無事なのですね

悟空 さて、社員と派遣とどっちが早いかな?

三蔵 なぜ一緒に来ないのですか?

悟空 あいつら遅せぇんだもの

三蔵 あいつらとは何ですか!

悟空 だって、寄り道してトリュフ探すようなやつらですよ?

三蔵 あれは美味しかったですね

悟空 そうじゃなくて

沙悟浄 おーい!おっしょうさーん!

三蔵 おお沙悟浄!よく来てくれました

悟空 はい正社員の勝ちー

三蔵 こら悟空!

猪八戒 おーい沙悟浄、置いてくなよぉー!

悟空 派遣は断トツのびりー

沙悟浄 おっしょうさん、だいじょうぶかい?

三蔵 ええ、平気ですよ

猪八戒 わるいやつらは、もうやっつけたの?

悟空 とっくにな

猪八戒 そっか

沙悟浄 そっかそっか~

猪八戒 てことは

沙悟浄 てことは?

猪八戒 本日の任務終了~

沙悟浄 にんむ、しゅ~りょう~(コマネチのポーズで)

猪八戒 あっはっは! なんでコマネチ?

沙悟浄 なんでだろ~(テツandトモの動きで)

猪八戒 あっはっはっはっは! 沙悟浄、はらいてー

悟空 オイ、お前ら、オイ!

沙悟浄 なあに~? ごくうぅ~(だっちゅうののポーズで)

猪八戒 あっはっはっはっはっは! 沙悟浄、は、は、もうやめちくり~

悟空 お前ら、マジで鳥肌モノだな

三蔵 さ、帰りましょう

悟空 はい、アホは放っといて帰りましょう

猪八戒 ちょっと待って!

沙悟浄 ボクからも待って!

三蔵 どうしたのです?

悟空 オレ、すげー疲れてんだけど

猪八戒 ちょっと待って!

沙悟浄 ボクからも待って!

悟空 分かった分かった話進めろ

沙悟浄 ボクたち

猪八戒 ワタシたちがー

沙悟浄 やっつけた

猪八戒 わるいやつー

沙悟浄 おかげで喉が渇きました

猪八戒 そしておなかも空きましたー

沙悟浄 だからボクたち

猪八戒 わたしたちー

沙悟浄 猪八戒 飲みに行きたいデス!!

悟空 出たよ、寸劇

沙悟浄 寸劇じゃないよ猿芝居だよ!

猪八戒 もしくは茶番劇だよ!

悟空 そうなのかよ!

沙悟浄 そうだよ

猪八戒 ひどいよ寸劇だなんて

悟空 ひどいのはお前らの頭脳な

沙悟浄 ね、おっしょうさん、行きましょうよ~

三蔵 いいえ、私は遠慮します

猪八戒 なんでー?

三蔵 修行の身ですから

猪八戒 なあんだつまんない

沙悟浄 悟空は行くでしょ?

悟空 行かねえ

猪八戒 なんでなんで?

悟空 仲よし二人組で行けばいいだろ?

猪八戒 なんだよそれー

沙悟浄 じゃさ、おごるからさ

悟空 マジ!?

沙悟浄 マジマジ!

猪八戒 さすが沙悟浄だわー

悟空 さすが社員だわー

沙悟浄 てことで、3・3・4ね

悟空 は?

沙悟浄 は? ってなにが?

悟空 おごってくれるんじゃねえの?

沙悟浄 10のうち、6をおごるってことだよ

猪八戒 いいないいなー、6もおごってもらえて

悟空 ていうか、4がオレ?

沙悟浄 そうだよ

猪八戒 いいないいなー、6もおごってもらえて

悟空 お前ら7じゃねえか

沙悟浄 分かったじゃあ3・3・7で

悟空 もう締めなの?

猪八戒 それじゃ5・5・6は?

悟空 それはサビ止めな

沙悟浄 そしたら6・6・6でいこ

悟空 不吉!ていうか足して10にするつもり毛頭ねえのな

猪八戒 763!

悟空 それ、オレらのアイコン描いてくれたナムさんだろ!?

沙悟浄 110!

悟空 通報すんな

猪八戒 119!

悟空 どこで火事? ていうか、電話番号シリーズ?

沙悟浄 117

猪八戒 117~

沙悟浄 猪八戒 に~んげんっていいな~

悟空 昔ばなし!

沙悟浄 0120-333-906~

悟空 お電話待ってます、ってか

猪八戒 あっはっはっは! 沙悟浄、超ウケる。美輪さんでしょ?

三蔵 み、美輪さんなの?

悟空 食いついた、おっしょうさんが食いついた!

三蔵 わたくしのオーラ、見ていただけませんか?

悟空 俗世間まるだしじゃないですか!

三蔵 あらいけない!

悟空 どした? おっしょうさん

三蔵 オーラの泉、見なくちゃだわ

沙悟浄 あ、ボクもだ!

猪八戒 うわあ、オイラも!

三蔵 間に合うかしら

沙悟浄 マジ、電車遅すぎるよ、クソ野郎

猪八戒 高円寺までノンストップで行けよな~

悟空 お前ら、身勝手すぎるだろ

沙悟浄 悟空はどうすんの?

悟空 赤ちょうちんで一杯ひっかけてくわ

猪八戒 うわ~、超・哀愁~

悟空 お前らのせいでな

三蔵 悟空、オーラが消えかけてますよ

悟空 おっしょうさんまでそんな・・・

沙悟浄 悟空のオーラが、飛びます飛びます!(坂上二郎のマネで)

猪八戒 あっはっはっはっは! 古すぎて超ウケる!

悟空 お前らさっさと帰れ!

<文:まとはずれ イラスト:ナム>

ナムさんのサイトはこちら

<おまけ>
MI WA THE WORLD(美輪明宏のモノマネ動画)
http://www.youtube.com/watch?v=D5KFKgWBRjk
0120-333-906~のくだりは必聴


健こうしんだん


ボクは こないだ 健こうしんだんにいきました。

ボクは あさ起きたとき すぐにおしっこが出たくなります。

おちんちんのうえのおなかのところが ぱんぱんになっていて
いっつも 「もれるもれる」といいながらトイレいきます。いっぱい出ます。

だけどきょうは 健こうしんだんのば所で おしっこをするので がまんです。

でも そのとき ボクは 健こうしんだんのば所まで 1じかんくらいかかるとゆっていたのを おもい出しました。

ボクは 絶たいにがまん出きないとおもいました。
でも いまおしっこ出たら 健こうしんだんのば所で 出ないとおもいました。

ボクは どうしたらいいのか わからなくなって なきそうとおもいました。

だけど ボクはそのとき はつ明をしました。おとながいつもゆってる
「せっちゅうあん」を気がついたので 半ぶんだけ おしっこを出そうとおもいました。

ボクは そうっと おしっこをしました。ちょろちょろ出しました。
そしたら 気もちがよくて おしっこがだんだん加そくして
じょーじょー出ました。

だめだ! とまらない。

だけど ボクは おちついて がんばって おちんちんの ね元のところにちからを入れて がんばて おしっこを止めたです。

そしたら すこしだけ のこったです。よかったとおもいました。
でも おちんちんのうえのおなかのところが きもちがわるくなったです。と中でおしっこをやめるのは からだがよくない思いました。

健こうしんだんのば所についたとき しんちょうと 体じゅうを はかったとき 「これにおしっこをしてくださいね」 と紙のコップを おねえさんにもらいました。

トイレのまえで かいしゃのおじさんに 「どれくらい入れればいいの?」ときいたら べつのおじさんが 「満タンだ! 満タン! なみなみにこぼれるくらい入れろ」とゆってきました。

そしたら おじさんたちは がらがらしたこえで 「わはは わはは」 とわらいました。

ボクは おとなのビールのマネをして 紙のコップに口をちかづけて 「おっとっとっとっと」とゆったら 中ねんたちは「がはは ぐはは」と おおいに わらっていました。

そしたら 中ねんたちが わらったとき いきが 生ごみのにおいしました。
ボクは このなかのだれかが びょう気とおもいました。 

 ボクは35さいより わかいので バリウムとゆうやつは のみませんでした。レントゲンしました。

 中ねんたちが 大きいバスの中から 牛にゅうをのんだみたいな口で 出てきました。

そして 「宇ちゅうゆうえいみたいだった」とゆいました。
つかれたかおをしてたです。

 「ボクも宇ちゅうゆうえいしたいなあ」とゆったら
「やれやれ!いまからやれ!」とゆわれました。

 ボクは 丁ねいに おことわりしました。

プリクラ


 
 道端にプリクラが落ちているのが見えた。
 16分割された文庫本サイズのその紙に近づき、下世話な興味丸出しで拾ってみたらハゲの写真だった。
 
 うひぃ! 思わず声がでてしまった。
 それは、てっぺんハゲの増毛課程を16分割した雑誌の切り抜きだったのだ。触れた指先からハゲのエキスが染みこんでくるような気がして、近くのパチンコ屋に駆け込み、トイレで手を洗った。何度も何度も。何度も洗った。

 あれは、いったい、なんだったんだろう。
 なんで、こんなミラクル、起きるんだろう。
 だけど、なにも分からない。

 こんなことが、よくあることなのかどうか分からないけど、この記事を読んでくれた人にだけ伝えたい。同じ轍を踏んで欲しくないから、伝えたい。道端のプリクラには注意してほしいと。

平成19年6月22日(金) まとはずれ記す
 

有限会社 西遊記1(西遊記ダイアローグ 改め)


 
登場人物
悟空 悟空
三蔵 三蔵
沙悟浄 沙悟浄
猪八戒 猪八戒

 
悟空 おっしょうさん!助けに来たぜ!

三蔵 悟空!

悟空 おっしょうさん、ケガはねえか?

三蔵 ええ平気です。早く縄をほどいておくれ

悟空 よっしゃ!

三蔵 沙悟浄と猪八戒はどうしました?

悟空 アイツら遅せえから、下で待たせてる

三蔵 みんな無事なのですね

悟空 いま、金斗雲呼ぶからよ、下に戻ろうぜ。ピュウゥ!

三蔵 今回は悟空に助けられましたね

悟空 いつものことじゃねえか、おっしょうさん

三蔵 そうでしたかねえ

悟空 な、おっしょうさんよ

三蔵 なんですか?

悟空 な、おっしょうさんよ

三蔵 なぜ2回呼ぶのですか?

悟空 そろそろ正社員にしてくんねえかな

三蔵 またその話ですか

悟空 派遣会社のピンハネがひでえんだよ

三蔵 そうは言ってもねえ

悟空 な、おっしょうさんよ

三蔵 なんです?

悟空 な、な、おっしょうさんよ

三蔵 しっかり聞こえていますよ

悟空 前から疑問だったんだけどよ

三蔵 ええ

悟空 なんで沙悟浄だけ正社員なんだ!?

三蔵 彼はよくやってくれますからね

悟空 はあ?アイツがぁ?水ばっか欲しがって使えねえじゃんか

三蔵 そういうところです。悟空のいけないところは

悟空 だってよぉ

三蔵 そんなことでは、猪八戒に先を越されますよ

悟空 ちょちょっ、そりゃねえよ、おっしょうさん

三蔵 猪八戒も最近はよくやってくれてます

悟空 ブヒブヒ鼻鳴らしてばっかで全然ダメじゃん

三蔵 悟空、いい加減にしなさい

沙悟浄 おーい!おっしょうさーん!

三蔵 おお沙悟浄!よく来てくれました

悟空 正社員が来た

沙悟浄 はー、つかれた。みず、みず、水をください

悟空 緑の正社員が来た

三蔵 こら、悟空!

沙悟浄 なんですか?

悟空 なんでもねえよ!

猪八戒 おーい沙悟浄、置いてくなよぉー!

悟空 お、肌色の派遣

三蔵 ご苦労さま、よく来てくれました

沙悟浄 遅いよ遅いよ~、ちょはっかい~

猪八戒 はー、しんどい

悟空 さて帰るぞ

猪八戒 ええー、悟空そりゃないぜ、着いたばっかしなのに

悟空 だから下で待ってろって言ったじゃねえか

猪八戒 だってー、なあ? 沙悟浄

沙悟浄 ああ

猪八戒 そうそう

沙悟浄 うんうん

悟空 さっぱり分かんねえよ。とにかく帰るから、お前らは歩いて来いよ

猪八戒 ええー!?

沙悟浄 おっしょうさんと悟空は金斗雲?

悟空 あたりめえだ

三蔵 悟空、一緒に金斗雲に乗せてあげなさい

悟空 やだね

猪八戒 たのむよ悟空ちゃん

沙悟浄 俺からも頼むわ、ご・く・う!

悟空 い・や・だ!

三蔵 正社員

沙悟浄 え?おっしょうさん、なんて?

三蔵 なんでもありませんよ

悟空 ・・・くっ、分かった分かった。乗せりゃいいんだろ!

猪八戒 早く呼んでよ、金斗雲

悟空 うるせえ、もう呼んである

猪八戒 あっそう、・・・にしても、はら減ったなー

悟空 なんもしてねえのにな

三蔵 悟空、そういうことを言うものではありません

悟空 だって、おっしょうさん助けたのは俺! こいつら活躍ゼロだぜ?

猪八戒 ファイトだけは認めてよ

沙悟浄 そうそう認めてあげてよ

悟空 自分らで言うんじゃねえ

猪八戒 悟空、如意棒ちょっと見して

悟空 は? なにすんだ?

猪八戒 ・・・これ、食えるんじゃない?

悟空 食えねえよ!

沙悟浄 食える食える!ファイト!猪八戒!

悟空 応援しても食えねえよ!

猪八戒 めんたい味

悟空 うまい棒じゃねえ!

沙悟浄 食える食える!ファイト!猪八戒!

悟空 ウザいからオマエら離れろ

三蔵 言われてみれば、おなか空きましたね

悟空 まあ、たしかに俺も減ってるな

沙悟浄 そういや、キュウリ持ってるよ

悟空 あんじゃねえか

沙悟浄 ここ来る途中、村の人にもらった

三蔵 親切な人たちなのね

沙悟浄 「カッパって、キュウリ好きなんだろ?」って、投げつけて来ました

悟空 嫌がらせだろ?それ

沙悟浄 村人のやさしさが沁みたよ

悟空 話を聞け

沙悟浄 そうそう、猪八戒も貰ったんだぜ

三蔵 ほう、なにをいただいたのですか?

猪八戒 ・・・えーと、なんて言ってたっけ?沙悟浄

沙悟浄 えーと、ミ、ミなんとかって言ってなかった?

猪八戒 そうそう、ミミガー!

悟空 うわー、残酷な当てこすりだなー

猪八戒 どういうこと?

悟空 知らない方がいいこともある

三蔵 とにかく調理して食べましょう

沙悟浄 千六本にキュウリを切ったから、ミミガーと和えてみよう

猪八戒 わ、うまそう!沙悟浄って天才!?

沙悟浄 そんなことないよ、「河童の川流れ」って言うじゃない

悟空 自分の諺くらい正しく覚えとけ

沙悟浄 さあ和えた。どれどれさっそく味見を・・・うん、まったくないね、味

猪八戒 だったら、しょうゆ持ってるよ、寿司パックに付いてたやつだけど

悟空 貧乏くせえ

三蔵 だったら私、バルサミコ酢持ってますよ

悟空 マジ!?

沙悟浄 マジ!?

猪八戒 マジ!?

悟空 なんで持ってんの?

沙悟浄 おっしょうさん、味に深みが出ますよ!

猪八戒 ナイス!おっしょうさん

悟空 お前らとは、「マジ!?」の意味が違うのな

猪八戒 あ!そうだ俺、トリュフ持ってる

悟空 マジ!?

猪八戒 来る途中、クンクン嗅いで探してきたの。な?さごじょ~?

沙悟浄 うん、ちょはっかい~

悟空 完全にピクニック気分だよな

猪八戒 苦労したんだよな~、さごじょ~?

沙悟浄 うん、ちょはっかい~

悟空 お前らの寸劇はもういいから、この際、持ってるもの全部混ぜろ

猪八戒 ないよ

沙悟浄 もうないよ

三蔵 私もありませんよ

猪八戒 悟空だけだぜ、なんも出してないの

沙悟浄 あーあ、やってらんねえ

悟空 なんでそうなる?あーはいはいすみませんでした

沙悟浄 分かればいいよ

猪八戒 うん、それでいいよ

悟空 いつかとっちめてやるからな

三蔵 さあ、食べましょう

猪八戒 うまい!

沙悟浄 イケるねえ

三蔵 おいしゅうございます

悟空 おほ、ホントにうまいわ

沙悟浄 あー食った食った

三蔵 さて、帰りましょう

猪八戒 ていうか、金斗雲は?

悟空 あれ?おかしいな

猪八戒 ほんとに呼んだの?

悟空 ああ、呼んだよ、ピュウゥって

三蔵 悟空、いますぐ確認しなさい

悟空 沙悟浄、悪いんだけど連絡してくれよ

沙悟浄 なんでボク?

悟空 携帯持ってんのお前だけだし

沙悟浄 しょうがないなあ

悟空 悪りいな正社員

三蔵 こら悟空!

沙悟浄 えーと、配送センターにかければいいんでしょ?

悟空 たのむ

沙悟浄 もしもし?えーと、さっき金斗雲頼んだ、・・・ええ

猪八戒 オーダー通ってなかったのかな?

三蔵 沙悟浄、急ぎでお願いしなさい

悟空 センターはなにやってんだよ

猪八戒 大忙しなんじゃない?

三蔵 不景気なのに、そんなはずないわ

沙悟浄 しーっ、そうですそうです悟空の名前で、え!?

三蔵 なにかしら?

猪八戒 なんだろう?

悟空 なんなんだよ!?

沙悟浄 いま出たとこだって

悟空 三蔵 猪八戒 出前かよ!

※悟空、三蔵、沙悟浄、猪八戒のアイコンを募集します。謝礼はありません。
※追記 お友達のナムさんに、アイコンを作ってもらいました。微妙なムカつき加減がたまりません。おかげで記事に深みが出ました。ナムさん、ほんとうにほんとうにありがとう!

ナムさんのサイト
http://www.geocities.jp/peepingnanda/

何故なんだ、レジ子。


 30歳を過ぎて転職したばかりの頃だった。

 いい歳して金がない上に残業続きで自炊をする時間もない。夕食の選択肢は外食か弁当に絞られた。だけど外食は高い。そしてコンビニ弁当は味気ない。利用したのはスーパーの弁当。コンビニ弁当に比べ、若干の手作り感が味わえるのがその理由。それを一人ぼそぼそ食う。そんな毎日だった。

 その日も、へろへろの体にくたくたのスーツで、シャケのり弁当500円ひとつを手に取る。おお!50円引きシールが。儲けた気分で左手に鞄、右手にシャケのり弁当を持ってレジへ直行する。レジの女の子(以下、レジ子)がバーコードを読み込ませながら言った。

 『お箸お付けしますか?』

 うーむ。家のを使うと洗うの面倒くさいよな。かといって割り箸もらえば環境破壊の原因になるなあ…。ガサツと偽善が頭の中で小競り合う。どうしたものか。財布の小銭入れから500円玉を取り出しながら答える。

 『お願いします』

 ガサツは強い。相当に強い。食い終わったら容器と共に袋に押し込んでポイだ。怠惰?堕落?不精者?素敵な言葉やん。なんて事を考えながら500円玉を受け皿に置き、財布をポケットにしまっているとレジ子が言う。やわらかな口調でありながら、それは耳を疑う鋭利な言葉だった。

 『何膳お付けしますか?』

 全身を走る衝撃。急激な気圧低下でも起きたかのように、血液が体中をさわわわわーと駆け巡る。暑いんだか寒いんだか区別がつかない。ただただ口調とは裏腹な言葉の意味を飲み込めずに狼狽する。それでも、それでも私は、狼狽を悟られないよう、出来うる限りの平静さを装って毅然と答えなければならなかった。

 『一膳で』

 事態を整理してみる。50円引きのシャケのり弁当450円。レジに持ち込んだのはそれだけだ。それ以外は一切持ち込んでいない。飲み物だって手にしてないし、買い物かごすら使ってないのだ。そんなの一膳に決まってるだろ。なんでだ?レジ子。なんでそんなこと聞くか。サービスのつもりならとんだ勘違いだ、レジ子。一杯のかけそばじゃあるまいし分け合って食うってのか?それとも腹を空かせた兄弟が待ってそうに見えるのか?空気を読め、レジ子。

 恥ずかしさのあまり早足で出口へ向かう。開ききらない自動ドアで肩を打ちつつ外へ出ると、火照った顔面を木枯らしがぴゅうと叩き、やっとのことで冷静さを取り戻す。それと同時に、べらぼうに腹が立ってきた。べらぼうにだ。そもそもがだ、30過ぎの男が割引き弁当片手にレジに立つこと自体、負け戦なのだ。ひっかき傷だらけだ。傷口が沁みる。だからやさしくして欲しい。マキロン塗って欲しい。それをなんだレジ子のやろう、ウナコーワ塗るような真似しやがった。くそう、あいつ、おまえなんか、おまえなんか、おま、あれ?あいつ、田中康夫に似てなかったか?腹話術の人形みたいな顔しやがってこのやろう。

 どうにも怒りが収まらなくて、よっぽど引き返して詰問しようと思ったが止めておいた。もうこれ以上傷付くのは嫌だから。それにしてもだ。それにしても一向に解せない。どうにも解せない。ああ、解せない。何故にあんなことを言う。くたびれた企業戦士に何故つらく当たる。教えてレジ子頼むから。真実が知りたいだけなんだ、ああレジ子。うう、レジ子。おお、レジ子。

何故だ、何故なんだ、レジ子。

※2006年、除夜のテキスト祭に参加した時のやつです。