会社の吉田さんが、とある書類に「セブンエレブン」と記述していた。セブンイレブンのことである。真面目な表情でボールペンを走らせているのを見ると、どうやら冗談ではないらしい。さほど重要な書類ではなかったので敢えて指摘はしなかったが、「どうして?」という疑問は拭えない。ネイティブの発音に倣ったものかと思ったが、吉田さんが英語に堪能な人物だとは聞いたことがないし、そもそも「エレブン」とは発音しない。毎日セブンイレブンのCMが流れていて、吉田さんだってそれを見ているはずだから勘違いの可能性は低いし、何かがもらえるポイントシールも集めているみたいだし、会話では「セブンイレブン」と言っているのを何度だって聞いている。いまさら「あれどういうことですか?」とは聞けない。「イレブン」から「エレブン」置き換えのメカニズムは謎のまま。秋の夜長、物思いの題目にはうってつけかもしれない。
「雑念エッセイ」カテゴリーアーカイブ
男気とは
ペッパーランチで、飛び散る油のことなど全く意に介さないことである。
なんなら、「肉の油よ、Tシャツにはじけ!」、「あわよくば7つはじいて、北斗七星の形とかに、なれ!」とばかりにノーガードなその姿に女性は惚れるのだという。
ていうかよ、店員YO!そんな置き方されたら防ぎようがないじゃない。
あ、これって頓知?サービス頓知?わかった、座禅組んで頭に唾つけてポクポク・・・。っていらねえ!そんなサービス。こっちはアチチ!ですよ。紙を持ち上げた左手に油がダイレクトにかかってアチチですよ。ひと昔前のマンガのリアクションみたいなことになってましたからね。目が×印になったりして。とにかく、こういった嫌がらせは二度とやめてください。熱いから。
コンピューターおばあちゃん
いま、情報流出が熱い。
その流出ペースは芸能人お宝写真を凌駕する。というほどに、まあー出るわ出るわ。コーラックの服用後ぐらいにこんもりと出ているようです。で、その理由というのが連日の報道にもある通り、その作者が逮捕されたことで有名な某ファイル交換ソフトが原因らしいのです。
おかげで各地の県警、省庁、教育機関、企業などが上を下への大騒ぎ、右へ左への反復横飛び。という、どうしたらいいのか分からない状態になっちゃってる状態。だけどもこれは他人事ではありません。知らない間に自分自身の情報が広く流布しているかもしれないのです。ただひとつ私達に出来ることは、どこかの誰かが私の個人情報を流出してしまうことがありませんように。と両手を合わせて祈るのみ。
さて、ここからが本題。
私の友人が短期アルバイトでマイクロバスの送迎をしていた時のエピソードで、バスに乗車してきたご年配の方々が、「○○さん、やるなら専用パソコン買ってやらないとダメだよ。」と、例のソフトの話題で大いに盛り上がっていたというじゃないですか。
あなおそろしや。専用パソコンを用いるとは紛れもなくヘビーユーザー。年寄りはゲートボールとか盆栽とか、縁側で番茶飲みつつ、たくあんかじって過ごしているんだとばかり思ってたけど、もう古い概念なんでしょうか。
そもそも、このソフトを使うには多少のネットワークに関する知識が必要で、そうなると彼ら彼女らは、なんていうか、ハイテクじじい。もしくはハイテクばばあ。ついでにもしくは、「コンピューターおばあちゃん」だと言える。幼き日に聞いていたあの歌が、今まさに遂に現実のものとなったのだと、ひどく感慨深いような末恐ろしいような気分です。
※コンピューターおばあちゃん
NHK「みんなのうた」にて1981年発表。
編曲は坂本龍一。詳しくはここ。
※追記
Drgorillaさんのブログで映像を発見しました。ここ。
包丁人味平
はなから自慢するつもりは毛頭ないが、私は調理師免許を持っている。
高校を卒業し上京。池袋の専門学校に1年通った。そのきっかけになったのが料理漫画。なんとも単細胞というか動機が曖昧というか貧困というか、両親に学費を捻出してもらってまで志すには一時的なノリ的要素が強かったと今では思う。しかし当時は本気も大本気で意気揚々と上京したものだ。
そのきっかけ漫画というのは当時人気のあった、ミスター味っ子、美味しんぼ。しかし群雄割拠の料理漫画業界にあって私を熱狂の渦に巻き込み、調理師を志す一番の立役者になったのはなんと言っても『包丁人味平』だった。
料理漫画と言えば対決。この漫画も主人公・味平とライバルたちの対決をメインに書かれているのだが他と一線を画するのは、野太い劇画タッチと過剰な演出、荒唐無稽なストーリーににあるだろう。とにかくいちいち大袈裟なのである。歌舞伎役者が見得を切るが如く目をひん剥きながら繊細な盛り付けをしたりする。
包丁人味平に関しては、解説サイトが多数あるのでここでは詳細は割愛。興味のある人は見てもらったり、或いは漫画喫茶で実物を読んでもらうとしましょう。
ただひとつだけ、どうしても忘れられないエピソードが『潮勝負』で、塩のみで味付けしたお吸い物を作るというシンプルな対決。しかし、お吸い物など一度も作ったことがなく、熱湯が湯気を立てる鍋の前で大いに悩む味平。その様子を眺める審査員たち。そして悩む味平。ゴクリと唾を飲む審査員たち。やっぱり悩む味平…。
どんだけ繰り返すんだ?と焦れはじめた頃にようやく、味平、塩を投入する。
それを見ていた審査員一同、『これは味平の負けだ。』と確信する。どうやら投入した塩が少なかったらしい。しかし、その吸い物を口にするや驚愕。絶妙なる塩加減だったのだ。何故だ何故だ?そんなはずはない!とうろたえるが、審査員の一人は見ていたのだ。悩む味平の額から一滴の汗が鍋へしたたり落ちたのを。そして叫ぶ。
『あのときの汗か!!』
ばかか、あんたら。
今ならすかさずツッコむところだが、ニキビ面で浅香唯好きの中学生だった私は、ただただおかしなベクトルへと素直に引き込まれて行くのみだったのだ。言うまでもないがこの話、荒唐無稽にもほどがあるし、なにはなくとも不衛生。うーん。この漫画を読んで調理師を目指したという事実が、今の私には信じられない。どういう思考回路だったのだろう。
ちなみに、この勝負、味平が勝利した。