早朝に酒屋の自動販売機で熱い缶コーヒーを買う。ゴキ、とやる気のない音を立ててぬるい缶コーヒーが落ちてきた。
熱い缶コーヒーを放置すると、その温度が気温に近づいていく過程の中でコーヒーが最もまずくなる一点がある。今、私が手にしているものはその一点を完全に再現していた。ぬるさの絶対温度というものがあるとしたら間違いなくこの温度だろう。
暖を取りつつ眠気を覚まそうと思っていただけに、私はとてもがっかりしたのだが、酒屋を起こして返品する行為とその労力の間に折り合いがつかないと判断し、仕方なくその缶コーヒーを飲んだ。一瞬にして身も心もぬるまった。思わず、うげぇという顔をしていたら犬が見ていた。あっち行け。