キットカット(ずんだ風味)


 
こういうのを見つけたんですよ。

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 「ずんだ」って言ったらあれですよ、枝豆をすりつぶして作ったあんこですよ。
 食べたことありますか? 「ずんだもち」とかすんごくおいしいですよね。

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 うーん、だけど、これ、どうなんでしょう?
 原材料に、枝豆とカカオ豆が入ってるってことは、豆バーサス豆ですね。

 でも、買っちゃいました。
 たまらんたまらん、気になって気になって、んもー、たまらん! ってレジに差し出したら、「840円になります」ですって。ですってよ。高い、高くないですか? 普段、菓子類とか買わないから分からないですけど、こんなもんですか?

 これ、普通の大きさなんですよ。こういう限定商品って、やたらとデカイのあるじゃないですか。ジャイアントポッキーとか、ジャイアントプリッツとか。でも、ずんだキットカットは普通の大きさなんですよ。なのに、840円なんです。

 
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 サイズ比較の定番ってタバコですけど、私はもうやめたので、代わりにCDを並べてみました。ほら、普通の大きさでしょう? あ、あー、あーそうかそうか、これだと、CDじゃなくてLD(レーザーディスク)じゃないの? って言われる可能性があるか。・・・じゃあ、こうしてみますね。

 
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 靴です。サイズは25.5センチです。え? 本当はもっと足デカイんだろって言うんですか? LDよりデカイ足ってどんな足ですか。そんなわけないじゃないですか。もう、じゃあ、これでどうですか?

 
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 猫です。ウチの猫です。化け猫ってどういうことですか? そんなにデカくないですって。だから、あれは、LDじゃなくてCDなんですって。もうこれ以上、普通の大きさだってことを証明できる手段なんてないですよ。なんなんですか? もう、分からず屋! ああ、匙、投げたいです。・・・あ! これどうですか? これなら分かってくれるんじゃないですか?

 
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 文庫本です。もう、挙げ足取るのはやめてくださいね。
 そうですよね、なにも言えませんよね。え? なんですか?
 こんな、被害妄想な、記事書くような、やつは? え? 人間失・・・、あー、聞こえない聞こえない、あーーーー聞こえない聞こえないーーー、あーーーー(低音)、あーーーーー(高音)、聞こえませーーーんーーーーー。もう言った? 言うの終わった? え? え?

 人間失格!

きゅう。

***

 食べてみました。
 封を切った途端に枝豆の香りがすごい。
 味的には、枝豆の香りがするホワイトチョコレートといったところですね。
 ずんだ、ではないような。
 でもまあ、普通においしいです。

 

眼前3センチの、真実。


 
 当時、中学生だった私は、その言葉の正確な意味こそ把握していなかったものの、それが「いかがわしい」言葉であるということは承知していた。だからこそ、家族団らん真っただ中のブラウン管にその言葉見つけるたび、一人でぎこちなく俯いていたのだった。

 しかし不思議なことに、(というより、雰囲気を考えればむしろ当然のことながら)家族の大人たち誰一人として、その「いかがわしい」言葉について指摘するものはなかったし、中学生という、性的な話題に過剰な反応を示す「ビンカン」な年頃にあっても、その疑問について言及する友人は皆無であった。

 これはきっと、私の勘違いなのだ。
 でなければ、ゴールデンタイムの地上波に乗せてよい言葉だとは到底思えなかった。そう、これは私の勘違いなのだ。きっと、本当は、まったく別の意味を持つ言葉なのだ。無知、無知無知。ああ、無知無知。無知無知プリン。口に出さなくて本当に良かった。得意げに友人へ語ろうとしていた自分に、取り返しのつかない危なっかしさを覚え、脊髄がすうっと上から下に、素早く冷えた。

 それからは、その言葉をブラウン管に見つけても顔を上げていられるようになった。しかしである、しかしながら、である。(番組名も放映時間帯も忘れてしまったが)とあるバラエティ番組で、いまは現役を退いている上岡龍太郎が、その「いかがわしい」言葉に私が感じていた疑問について、そのままズバリ言及していたのである。

「美人局アナ大集合! って番組あるけど、あれ、どー見ても『つつもたせアナ』やないかい。しかも、大集合て! どんな番組やねん」

 再び、脊髄を冷たいものが走った。今度は下から上に。やっぱり私は、間違っていなかったのだ。そう思うのと同時に、その、眼前3センチでアフリカ象を見るような、「あまりにも近すぎて何がなんだか分からない」ような、あっけらかんとした自覚のない手抜かりに、得も言われぬ恐ろしさを感じたのだった。

 考えてみれば、スポーツ選手という「男」をバックボーンに、入社早々、退職金をむしり取って結婚するなどといった、質の悪さでは本職の美人局を凌ぐ女子アナの存在を鑑みれば、「美人局アナ」という言葉も、あながち間違いではないのかもしれない。

 長井秀和。彼のおかげで、懐かしい記憶が蘇ってきたことに感謝したい。あと、上岡龍太郎には現役復帰をお願いしたい。

Ctrl+V


 
 エクセル。
 「Ctrl+C」でコピーしたセルをペーストするために下方向にぐーっとドラッグする。ぴゃー!っという間に2000行。うぉっとっと。いっつも思うんだけど、必要ある? あの鉄砲玉のような加速って。で、上に戻せば戻したでぴゃぴゃーん!という間に1行目。まてまてまて。ペーストしたいのは100行、たったそれだけなの。分かってるって、お前が速くスクロール出来るのは分かってるって、すごい、すごいよ、お前がすごい速いってこと、すごい分かってるのオレだけだよ。とテレパシーを送ってなだめすかしても受信してくれないので、肩をガチガチに強ばらせて神経質オーラを発しながらおっかなびっくり小出し小出しにマウスカーソルを進ませ、戻し、進ませ、戻し、やっとこピッタリ100行を選択して「Ctrl+V」でペーストしたつもりがコピーしとる。コピーされた空白のセルがチカチカって光っとる。がく然とする。やり直し。

 あるある、よくあるー!
 という声が聞こえてきそうな、誰しも一度や二度どころでなく経験している他愛のないエピソードだけども、こんなエラーを一日に何十回となく繰り返すと、夕暮れ近くにはいよいよやられてきて、自分はどうしようもない人間なんじゃないかという絶望に暮れた精神状態になってくる。現実逃避したい。

 実際、同じミスを繰り返すノータリンには違いない。でも認めたくないから、マウスのせいにしてみたり、コピーされたチカチカのセルに、「通常のセルとは違うってことを分かりやすくアピールしてんじゃねえよ!」と理不尽に毒づいてみたり、だいたいがやね、「C 」と「V」が近すぎる。どこの馬の骨だよ、このショートカット発案したやつは。と、大人な話し合いをするために、そいつを血眼で探し出して、見つけた刹那に胸ぐらを掴みながら「あの、とりあえず、サイゼリヤ的なところでいいですか?」と伝え、最寄りのイタリヤっぽい飲食店に移動したのち、サラダバーをドリンクバーで流し込みながら、さんざんぱらとっちめたい。どういうつもりなんだと。

 もし、そいつのサラダがなくなれば色どりよくサーブしてやり、ドリンクが空になればおかわりを運んでやったりしながら、ねちっこく説教を垂れ流したい。コピーの「C」は分かるけど、ペーストの「V」ってなに? ヴェースト? じゃなかったらベースト? ザ・ベースト? なんだよエロ本か、それは「ザ・ベスト!」って、そんなことはどうでもいいからさっさと答えろお願いします。なんで「V」にしたの? なんで? なんで? 苦手なヤングコーンを代わりに囓ってやりながら問い詰める。答えてはやく。「・・・ヨカレト、オモテ」。そいつから謝罪の色が見え隠れする発言を引き出して溜飲を下げた私は伝票を手に立ち上がり、「気にするこたねえさ」とやさしく肩を叩き、Vサインをひとつ送る。頓知のきいたことをしたつもりになって店を出た。

以上、現実逃避おわり。

ドライビング・マナー


 
 信号待ちで隣に止まった白いマーチのお姉さんがキレイだった。まとめ上げた黒い髪に白いうなじ、ピンクのTシャツが眩しく映える。ハンドルを握ってキリリと前方だけを見据える横顔の佇まいに魅了された。そんなお姉さんが、なんとかエクスプレス(うろ覚え)とかいうスカした名前の運送トラックに煽られていた。つかず離れず車体を左右にゆらゆらさせるその様は、頭にネクタイ巻いた酔いどれサラリーマンのセクシャルハラスメントを連想させた。おい! オレのお姉さんになんてことを! と義憤に駆られたが、どうしてあげることも出来ない。悲しい。

 煽りが嫌いだ。必死でウンコを我慢している状況で背後に立たれるのと同じくらい嫌いだ。大嫌いだ。うっかりブレーキも踏めないような車間距離にストレスメーターはたちまちレッドゾーンを振り切り、こめかみあたりの血管が弾けそうになる。窓から中指を立てて汚い言葉を叫びたくなる衝動を、これまで幾度となく飲み込んできたことか。

 ガラリと話は変わって、路上にはキレイなお姉さんもいるがカッコイイお姉さんも多い。くわえタバコで颯爽と飛ばすお姉さんである。男のくわえタバコよりカッコよく見えてしまうのが不思議だ。くわえタバコの煙で目を細め、左手に携帯電話、さらに右手の内掛けハンドルでばっちり左折をキめたりすると言語道断にカッコイイ。長距離トラックの運ちゃんより断然カッコイイ。いやいや、勘違いしないで欲しいのは、運転しながら吸うなって言ってるんじゃないですからね。ただ、女の子には、そういう種類のカッコよさは必要ないんじゃないかって思うだけです。

 さらに話は変わって、キレイなお姉さん、カッコイイお姉さん。それに加えて変わったお姉さんもいる。信号待ちでバナナを食うお姉さんを対向車線に発見したのだった。いや、正確に言うとオバさんで、うーん、これを言うとネタなんじゃないかと思われそうなのだが、そのオバさん、ガッツ石松に似ていたのである。

 しかしそれは、バナナというアイテムに古来より備えられている『手にした人すべてにガッツ石松的な要素を付与する能力』のせいかもしれない。NO! だからといって安心するのはよくない。要するにバナナを手にした瞬間、私たちはガッツ化するのである。

 試しに、身近な人にバナナを持たせてみたらどうですか。ほら。そんな人の運転でドライブに行きたいですか? 行きたいんですか? バナナ片手に内掛けハンドルなんてもってのほかだし、そもそもバナナを手にした人に運転をさせちゃいけないと思いませんか。運転に説得力がなくなる気がしませんか。

 携帯電話もカーナビの操作もバナナも停止してから。県警からのお願いです。
 

リーチ麻雀


 
 待ち合わせの駅前で、見たくもない天気予報を携帯電話で確認し「なるほど」などと呟くのにももう飽きた。しかし、約束の人物は一向に登場しない。このヒマをどう処理したらよいものかと考えあぐねていたら「リーチ麻雀」の黄色い看板が目に入った。

 常々、疑問であった。
 大抵の場合において麻雀は「リーチ」を宣言するゲームであり、逆に言えば「リーチ」のない麻雀を私は知らない。にも関わらずわざわざ、「麻雀」に「リーチ」という単語を冠する必要性はどこにあるのだろう。

 なぜ、「リーチ」なのか。なぜ、「リーチ」だけにスポットを当てるのか、抜擢されるのか、フィーチャリングするのか、チヤホヤされるのか、赤丸急上昇なのか。どうして「カン」じゃいけないのか。試しに「カン麻雀」と呟いてみた。よく分からない。分からないけどダメっぽい。それならばと「チー麻雀」と呟いてみる。中華の調味料だ。たぶん甘辛い味噌。まさかと思いつつ「チーマージャン」で検索してみると実在した。でも味噌じゃなかった。となると残ったのはあれだけだ。「ポン麻雀」。頭が悪そうである。誰一人として得点計算が出来ない。誰が親なのか誰も把握してない、ただただ牌をガチャガチャかき回してるだけの雀荘。そんなイメージ。

 「ポン」という響きが持つ頭の悪そうなエネルギー。
 この破壊力はちょっと凄いかもしれない。いや、ちょっとどころではないかもしれない。試しにIQの高そうなものと絡めて呟いてみる。

 「中田ポン英寿」
 ボールを誰に回したらいいのか判断できなくて「どうする?」って敵に聞くし、何度言ってもボールを手で触ろうとする、とても司令塔とは呼べない。

 さらに、多機能OSと絡めて呟いてみよう。
 「ウインドウズ ポン」
 エクセルの処理がイライラするほど遅いのに、エロサイトのページ読み込みは素早い。ブラインドタッチのスピードに表示が追いついてない。フリーズしたフリをする。

 次は、ハイテクなもので呟いてみる。
 「ポンIP電話」
 声が遅れて届くし、ハイテクの意味をはき違えているらしく勝手にロボット風の音声に変換する。

 どんどん呟く。
 「ipodポン」
 直前の曲を忘れてしまって同じ曲ばかり再生するので、全然シャッフルプレイじゃない。

 もひとつ呟く。
 「ポン東京大学」
 偏差値30、地元ではバカ田大学と呼ばれていて、教授全員、鼻毛が出ている。

 日本における大学の最高峰である東大でさえこの有り様。
 「ポン」恐るべしである。そしてこのことは大発見であると言って良い。

 しかしながら、遅れてきた約束の相手に大発見を得意げに語ったところ、「ポン発見」と一蹴されてしまった。頭に来たので「ポン野郎」となじると、「ポンて言った方がポンなんだぜ」と程度の低い泥仕合を演じる羽目に。店員が「あそこのお客ポン」と囁いているような気がした。酔いが醒めた。