業務連絡004 マーケティングリサーチ


 
Subject:[業務連絡]マーケティングリサーチ
To:加藤 千葉 栗田 岡星 富井
Fm:安達

社員各位へ

あつかれさん安達です。

簡単なマーケティングリサーチをしたいので、
質問に答えてくれるかな?

***

あなたはいま、
砂漠に立っています。
強烈な太陽光線が肌を熱く焼いています。
もちろん日陰などありません。
し烈猛烈な暑さです。

あなたは、激烈に喉が渇きました。
とにかく、痛烈に水が飲みたいです。

だけど、水は持っていません。
オアシスの気配も感じられません。
見渡す限り、砂の世界です。
どの方角へ向かったらよいのか、
それすら分かりません。

もう、喉が渇きすぎて気が狂いそうです。

あなたは途方に暮れて、砂の上へ寝ころびました。
このまま干からびて死ぬのを待つしかないのか・・・。
そう、覚悟を決めたその時です。

そこになんと、
水瓶を抱えた天使がひらひらと降りてきました。

そしてあなたに尋ねます。
「ね、ね、ここに水、あるけど、飲む?」

あなたは無言でブンブンと頷づき、
水瓶を奪うようにして抱え、
いままさに口をつけようとしたその時、
天使は言いました。

「あのね、あのね、その水瓶の水ね、
雨の日の満員電車の車内に結露した水だけをね、
丁寧に丁寧に集めた水なんだよ」

***

さあ、どうかな。
飲める? 飲めない?

安達

 

業務連絡003 口笛が聞こえる


 
Subject:[業務連絡]口笛が聞こえる
To:安達専務
Fm:千葉

千葉です、おつかれさまです。
掲題の件について連絡いたします。

本日、営業車で走っていたときのことです。
ふと、森の中から口笛が聞こえてきました。

道端に車を止めて、窓を開けみると、
かすかな音色が聞こえます。

しかし、あたりには誰もいないようでした。
私は、目をつむって耳を澄ましてみました。

やはり、森の酸素をたっぷり含んだそよ風に乗って、
どこからともなく口笛が聞こえてくるのです。

フフ、森の妖精サンが吹いているのかな?
と思ったのですが、自分の鼻笛でした。

以上。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
 ∧〃∧
( 。。 ) ∬  (株)ラブ・テクノス
ミ °彡 ⌒ ヽt_taketoshi@love-technos.co.jp
>°〉)))><   〓 千葉 武俊 〓
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
/ / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / / /

+++

Subject:Re:[業務連絡]口笛が聞こえる
To:千葉
Fm:安達

おつかれ。
千葉、鼻毛はこまめに切れ。
顧客も「何? 何?」ってなるだろ、それじゃ。
営業マンとして最低限のエチケットだからな。

安達

業務連絡002 沢田様の案件について


 
Subject:[業務連絡]沢田様の案件について
To:安達専務
Fm:加藤

お疲れさまです。
掲題の件についてご報告いたします。

午前中、沢田様から連絡がありました。
契約についてお話があるとのことです。
つきましては今日の夕方、自宅を訪ねることになりました。

これで何度目でしょうか。
恐らく、金額の吊り上げかと思われます。

この案件は、我が社がステップアップするための重要な
足掛かりであって、それを熟知した上での行為です。
これ以上、プロジェクトを引き延ばす訳にはゆきません。

わたくし、今日は絶対に折れません。
ビシッと仕留めてまいります。
差し違える覚悟で行って参ります。
結果は、後ほどご報告致します。

以上。

追伸:
カッコイイですか?私の署名。
インターネットから拾ってきたものなんです。
よろしければ署名のデザイン、
私が探してきましょうか?

★☆∵∴☆★∴∵★☆∵∴☆★∴∵★☆∵∴☆★
∵     (株)ラブ・テクノス     ∵
∴    加藤 光郎 kato mitsuro     ∴
★ ☆ E-mail:k_mitsuro@love-technos.co.jp
☆∴☆★∴∵★☆∵∴☆★∵∴★☆∵∴☆★∵∴

+++

Subject:Re:[業務連絡]沢田様の案件について
To:加藤
Fm:安達

はい、おつかれ。
まあまあ、落ち着け加藤。

相変わらず守銭奴だよなー沢田のジジイは。
昔っからそうだけど。

あとな、なにするか分かんないから気をつけるように。
考えもしないような卑怯な手でも使ってくるから。
オレもずいぶん非道い目に遭ってんだ。
のぼせたらゲームオーバーだからな。
あくまでも冷静に頼む。

あとな、メールの署名、いま作ってるよ。
とびきりクールなやつを。

安達

業務連絡001 水曜日の会食について


 
Subject:[業務連絡]水曜日の会食について
To:安達専務
Fm:加藤

専務、お疲れ様です。

先日行われた、パナップ・梅田社長との会食の件でお話があります。

はじめに、天気の話、そこから気象予報士の話に変わって、
石原良純さんの名前が出てきたのは、ご記憶にございますでしょうか?

梅田社長が、「ね、知ってた?彼って、気象予報士なんだってね」と仰ると、
専務が、「元・石原連中だったしね」と発言なされました。

本気なのか冗談なのか判断がつきかねたため、
指摘する契機を逃してしまいましたが、
正確には、「石原軍団」だと思います。

専務はお気づきにならなかったかもしれませんが、
梅田社長以下、怪訝そうな表情をしておられましたので、
私は、手に汗を握っておりました。

個人的な意見を述べさせていただけば、「軍団」を「連中」に
置き換えてもよいのは、日光猿軍団だけです。

僭越ながら、ご注進申し上げましたことをお許し下さい。

以上。

★☆∵∴☆★∴∵★☆∵∴☆★∴∵★☆∵∴☆★
∵     (株)ラブ・テクノス     ∵
∴    加藤 光郎 kato mitsuro     ∴
★ ☆ E-mail:k_mitsuro@love-technos.co.jp
☆∴☆★∴∵★☆∵∴☆★∵∴★☆∵∴☆★∵∴

+++

Subject:Re:[業務連絡]水曜日の会食について
To:加藤
Fm:安達

おつかれ。

そうか、軍団か。
心配かけてすまんな加藤。

ところで、加藤の署名ってカッコイイな。
俺も暇なとき作ってみるかな。

安達

パーソナルな風よ吹け


 

senpuki

 PCショップの入り口に扇風機がディスプレイされていた。
 よく見かける光景なのだが、どうも違和感がある。売り場に棒立ちして考えてみたが正体が見えてこないので、携帯電話で写真を撮っておいた。PCに取り込んで解析するのだ。

 落ち着いて眺めると、写真からいくつかのことが分かってきた。 
 まず、「1、680円」の赤い文字が飛び込んでくる。しかし問題はここではなく、その上の「主な特徴」にあった。

 「ロータリースイッチ 弱 <=> 強 切替」

 メカに疎い人間であれば、「ほほう」などと漏らすかもしれないが、要するに「風量調節は2段階だけ」という、マイナスのセールスポイントなのである。

 そして、「ロータリースイッチ」などど呼ばれるものの正体は、何のことはないダイヤルのことで、ガチャガチャと回す大昔のテレビのチャンネルと似ている。こうしてみると、もう、なんていうか、弁解の余地がないほどにコテコテの旧型扇風機であることが分かる。

 鉄腕アトムが青空を飛び回るはずの、「21世紀」という「あの頃の近未来」に今、ボクたちは存在しているのに、風量調節2段階の扇風機という現実を突きつけられては、近未来はまだまだ遠い未来なのだと実感してしまう。

 そこへ来て、「パーソナル扇風機」の商品名だ。
 1、680円という激安価格であるが、「パーソナルコンピューター」と同じ意味合いの「パーソナル」を頭に付与することによって、他社扇風機の追随を許さぬ最新のイメージを喚起させ、スペックの貧弱さをカバーしようという魂胆が見え隠れする。おおかた、「パソ扇」とでも呼んで欲しいのだろうが、そうはいくか。

 それにしても、「パーソナル」という言葉は便利だ。
 いつもの商品も、違ったイメージで私たちの前に現れる。
 例を挙げるなら、

 パーソナル電球
 パーソナル軍手
 パーソナル馬鈴薯
 パーソナルペヤング
 パーソナル耕運機
 パーソナル除草剤
 パーソナル仏壇
 パーソナル墓石

 といったところか。あとは各自の課題としよう。

 同じ手法により、売り上げ不振の商品や影の薄いものも、「パーソナル」の付与により、俄然、イキイキしてくる。

 パーソナルメンマ
 パーソナルサンバイザー
 パーソナルサスペンダー
 パーソナル鳥取
 パーソナルPS3

 またいい加減なことを。という声がちらほら聞こえてくる。しかし、企業がその存在に気付いてないだけで、「パーソナル」はコロンブスの卵的発想なのだ。

 私は実際に、商品化第一弾として「パーソナル鼻毛カッター」の開発を進めているところだ。どうか、アイデアの盗用は勘弁願いたい。万が一の場合、法的手段を取ることも辞さない覚悟である。そのときは、腕利きのパーソナル弁護士があなたの相手になるだろう。