制御不能です


 
 先日、失神するかも。と思うくらいの腹痛に追い込まれたのですが、ブラックアウト寸前の間一髪、パンツを降ろすや否やといった感じで事なきを得ました。しかし安堵も束の間、実はこの時けっこうな尿意も併せ抱えていたのです。当然、放尿するわけですが、私にはどうでもいいような場面で合理化を目指す癖があって、この時も別段急いでいる訳でもなく、そのような必要性は全くなかったのですが、ウォシュレットでお尻を洗いながらの放尿を画策したのです。

 つまり、時間短縮のための同時進行です。肛門を目指す放水がそのまま尿として出てゆくような、そんな側面図を思い描きながらウォシュレットの放水を開始し、いざ放尿を。と思ったのですが驚きました。出ないんです、尿が。正確には出せないと言ったほうがいいんでしょうか。催眠術にかかったみたいに一滴も出せないんです。意識が肛門の刺激に奪われてしまって――こういう言い方が伝わるかどうか不安ですが――尿を踏ん張ることが出来ないんです、刺激によるCPU使用率が100%に達していて放尿に意識を集中させることが出来ないんです。

 まさか、けつめどが放水によって刺激されただけで尿意のコントロールが不能になるなんて。ああすみません、興奮のあまり「けつめど」などと「肛門」を表す北関東から東北の方言を使ってしまいましたが、考えてみるに生理現象である強烈な尿意をも封じるのですから、肛門を牛耳る者は世界を牛耳ると言っても過言ではないのではないでしょうか調子に乗りすぎました過言でした。とにかくこれは是非みなさん、はちきれんばかりの尿意の用意をして試す価値ありです。

 えー、とは言いますものの正直に言いますが、訓練によりかなり強く意識すれば出ます、出すことが出来ます。ですが「なんだ出るんじゃねえか」などと言わず、ここはひとつ大人になっていただき、得も言われぬ制御不能感を味わっていただくのが正解かと思います。

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 話は変わりますが少し前に、「テキスト庵」というサイトに登録しました。ここは、エッセイ・随筆等のテキストの登録制リンク集およびポータルサイトです。アクセス数獲得を第一義の目的とせず、読み手としては新しいテキストの開拓、書き手としては自身のテキストのアピールを行えるサイトなのです、が、しかし。気軽に登録してみたものの、登録されているのは立派な文章を書かれる方ばかり。ひしひしとした場違い感に顔が青ざめる日々です。とはいうもののテキスト庵には面白いテキストがたくさんありますので一度覗いてみてはどうでしょう。

テキスト庵
http://www.spacehorn.com/text/index.html

 

スレスレ違いの路上


 閑散とした住宅街で業務遂行上やむなく路上駐車をしていたら、向こうからセダンって言うんですか? いわゆる一般的な車が近づいてきて、私の車の手前で止まったんです。運転手はコロッとした体型で大仏パーマっぽいのをあてた、いわゆる典型的な「ニッポンのおっかつぁん」だったんですけど、見渡せる限りの路上には私とおっかつぁんの車しかいなくて立ち往生する理由がないんです。だから私としても対処のしようがなかったんですが、ハンドルを握ったまま進行方向を真っ直ぐに捉えるおっかつぁんの視線から察するに、どうやら私の車とすれ違えるかどうか不安なようなんです。思わず、パーに開いた左手をグーの右手でポーンと叩いちゃいました。なーんだなるほどなるほどそういうことだったのか!

 って、おっかつぁん!
 どっからどう見ても通れる道幅で、スカスカっていうかガバガバっていうか、逆に接触するほうが難しいくらいの道幅だから、「大丈夫、行けますよ」っていう合図をしてもおっかつぁんは1ミリも動こうとしないし、ハンドルをがっちり握ったまま固まってるんです。メデューサによって石にされてるの? って思うくらいピクリともしないんです。埒が明かないので、私の車が前進して無事すれ違ったんですが、無意味な前進をさせられてどうにも釈然としませんでした。

 考えてみるとおっかつぁんてのは、自転車でも同じようなことをしますね。
 歩道を自転車同士ですれ違うことが怖いのか、超音波みたいなブレーキを鳴らして自転車を降りてしまうので、その体の分だけ歩道のスペースが狭くなってしまい、結果、対向の人も自転車を降りざるを得なくなるというのが、その事例のひとつです。だけどまあ、すれ違い能力の低下というのは老化に伴うものであって、致し方ないと思っております。

 それよりも聞いてください、自転車には苦い思い出があるんです。
 歩道を歩いていると「キャー、どいてくださーい!!!」という声がして、ハンドルをわなわな震わせた自転車が向こうからやってきたんです。その自転車の女性はとても太っていて転倒の恐れがあるため止まることが許されないようで、暴走機関車か、映画「スピード」に出てくるバスかなにかみたいに、道を空けるようにと懇願しながら走ってきたのですが、私がその叫びを聞いて目を上げたときにはすでに目と鼻の先の距離にいて、かといって歩道は逃げ場がないほど狭く、反射的に車道側へ避けたのですが、まあ状況としては、トップロープをさっそうと飛び越えてリングインするつもりがしくじって、ロープを軸にくるんと回転しながらリングに落ちてしまったレスラーの迷珍場面みたいに、私はガードレールを軸にくるんと車道へ転落してしまったんです。これで車に轢かれていたら迷珍場面の騒ぎじゃないわけで、目をバッテンにしてグーの右手を振りかざしながら頬を膨らませてコラー!! と自転車の女性に注意をしたのですが、道なき道を行くようにいろいろな人をなぎ倒しながら消えて行きました。今でも、うなされることがあります。

牛丼不信任案


 
 いまさらだし、みんな思ってるだろうからあんまり言いたかないけど、いま流れてる吉野家のCM、ありゃいけないね。見てるとそわそわするっていうか、ひやひやするっていうか、緊張する。ダメでしょCMで緊張させちゃ。だって食ってないんだもん。エア牛丼なんだもん。あるいは偽装食いなんだもん。ハムを牛肉って言い張るようなあっけらかんとした食ってなさ加減があるもん。エアとか偽装とか、なんだか図らずも今年の流行をいくつか取り入れてる感じになってるし。持ってる丼だってなんか、ちっちゃいし。どこ見て食ってんのか不明だし。あーもう、見てらんない!って気持ちになってくるから、口元にモザイクかけてもらったほうが精神衛生上、なんぼかいいよ。

 「もっと美味しそうに」。そういうダメ出しを言い出せない撮影現場の空気感がリアルに再現されたCMって、見たことないし斬新だけど、「食べてないよね?」って言えない空気が伝染したお茶の間の、あの変な感じをどうしてくれるの吉野家は。

http://www.youtube.com/watch?v=kXPWq4UiM08

こだわりシェフのきまぐれサラダ


 
 国道を走っていたらですね、『プロも絶賛<革命>卵』っていうコピーが書かれた車を見かけまして。まあ、革命的な卵みたいですけど、肝心の革命内容が書いてないんですね。そもそも「卵」と「革命」ってのが感覚的に結びつかないわけで。んー、あれですかね、ハイテクなんですかね。「落としても割れないセラミック殻!」みたいな。いやいや、割れてよ! って話だし、それを産んでる鶏にどんなエサ与えてるのか気になるし。そもそも「セラミック」=「ハイテク」っていう図式が古くさいし。じゃあアレですかね、「有機EL卵」。地デジ搭載でキレイ、鮮やか! ってすみません、yahoo!ニュースでサブリミナルされた単語をくっつけただけです。

 てな具合に気にしだすと運転がおろそかになってしまうんですが、もうひとつ気になったのは「プロ」って何? ってことなんですけど、「プロ」っていったら、うーん、何だろう、やっぱり棋士ですかね、そしたらやっぱりあの人ですかね。「羽生さん、革命卵の感想をひと言どうぞ」、「おいしいです、パチン!」ってそりゃそうです、将棋はプロでも、卵に関しては一般的な消費者ですものそれくらいしか言えないですし、宣伝としては何のアドバンテージにもならないわけです。あ、パチンてのは駒の音なんですけど。まあ、揚げ足取りするまでもなく、というか揚げ足取りましたけど、要するに「卵のプロ」ですよね、イコール「養鶏業者」ってことになるんですけど、まさかライバル業者の卵を絶賛するわけがないわけで、結論としては眉唾コピーだと。

 でもですよ、『こだわりシェフの』『行列の出来る』『昔ながらの』『屋台の』『ガンコ親父の』とかいう、なんとなくそれっぽいコピーを冠した大してウマくもない商品が日々、買い物かごに放り込まれてるってことは、『プロも絶賛<革命>卵』ってのも、レジを通る可能性があるわけで、方向性が違いますけど、例えば、例えばですよ、公園に、『プロも絶賛<革命>砂場』なんていう看板が立っていたらどうでしょう。砂場、大繁盛でしょうね、追っつかないでしょうね。おまけに、『鳥取直送の原材料から粒径200μmのものだけを厳選し均一な手触りを実現。また、砂鉄を7%配合し磁石好きのお子様にも配慮』なんていう解説があったら、砂場、埼京線並みの人口密度でしょうね、痴漢が出没したりして。

 たぶんですけど、きちんと商品名を見てないんでしょうね、見てても疑問を感じないんです、だから売れるんです。ということは、ということはですよ、それっぽい響きのコピーを持ってきても売れるんじゃないかと思うんですね、例えば、

 『おとなりさんちのこだわりカレー』
 『ふんわりやわらかコンソメスープ』
 『健壱なぎらのソースやきそば』
 『潮風をたっぷり受けたハヤシライス』
 『屋外のラーメン屋さん』
 『おさわりパブのクリームシチュー』
 『行列の出来る隠れ家居酒屋ガイドブック』

 このなかにも売れるのがある、間違いなくあるはずなんです。どのあたりまで脱線してもセーフなのか、そのボーダーラインが知りたいものです。

 

 

フラフラドライブ


 
 仕事の用事で道のり約90kmのとある市に行ってきたんです。
 普段、近場をウロウロするだけの私にとっては割とロングドライブでして。で、到着まであと数キロっちゅうところで、86キロくらいで、ぞぞぞっとしてきたんです。ぞぐぞぐっと寒気がしてきたんです。あーこれはやばい。すぐに薬飲まなきゃやばい雰囲気かも。もー、なんでまたこんな時に・・・。

 ということで、目的地の近くにあったスーパー、サティへ。1Fのなんとかファーマシーの小柄なおばちゃんに「あのー、なんか、寒気がするんです」って言ったら、「アラ! タイヘン! 大丈夫!?」なんて。商売とはいえ、他人から露骨に心配されるのが気持ちよくて、おばちゃん、もっと心配してよ。って2割増で青い顔してみたりして。

 で、1680円のと1480円の風邪薬をチョイスしてくれました。
 でも、用事を済ませたあと運転して帰る予定だったので、「眠くなんないやつありますかね?」って聞いたら、「そうねえ、じゃあ漢方かなあ、あー、でもねえ・・・」とか、値段が安いから勧めたくないんでしょうね、いろいろと逆ゴネされたんですが、そのあいだにも具合はみるみる悪化してて、なんかもーどーでもいーです。って感じで、結局はおばちゃんイチオシ(ゴリ押し)の1480円のやつを買うことに。

 ついでに「眠くなるのが心配だったら」って、金箱の高級ドリンクコーナーにパタパタ小走りで連れて行かれて「さあ、どれでも選んで!」みたいな顔されたんだけど、平気で1000円とかしゃーがる。「えー、高いなー」って洩らしたら、「じゃあ、これは?これ。500円の。半額なの今」だって。なんかおばちゃん必死じゃん。

 チーン!
 1980円也。結局どっちも促されるままに買ってしまって、してやられた感が満々。でも不思議と嫌な感じはしませんでした。それでまあ、約束の時間まであと2時間もあるし、車ん中で薬飲んで暖房つけて寝てようか。って袋を開けてみたんですが、

  
drug

 どっちも聞いたことねえ。

 ユニーKて。若者に人気の女性ユニットか。
 あと、総合かぜ薬って。ストナ! エスタック! パブロン!
 そういうのがよかったなあ。確かに分かりやすくていいけどこれじゃ「よし、治すぞ!」って思いこみの助走が出来なくないですか?

 だって、考えてみて。
 「エスターック!」って叫びながら飲むのと、「総合かぜ薬ー!」って言いながら飲むのと。分かるよね。リズム悪いよね。長いしね。どっちが早く効くかも、分かるよね?

 結局。
 2時間寝ても震えは止まらず、「すいませんすいません」と平身低頭でもって会合には出席できない旨を伝え、フラフラしながらも小刻みに休憩しつつ引き返してきたわけですが、今回のことから、「病は気から、薬は銘柄、熱は出ててもババアの口車にゃ乗るな」ってことを学びました。

 全然関係ないんですが、もし私が毒蝮三太夫だったら、おばちゃんに「まったくこのババア、システム手帳みたいな顔しやがって」って毒づいてたと思います。いや、なんとなくですけど。思いつきですけど。もちろん、愛を込めて、ですけど。

 
<関係ないついでのおまけ>
毒蝮三太夫 毒舌集
ttp://ww6.enjoy.ne.jp/~are/mamushi.html

個人的には、
「なんだか、千葉県みたいな顔してるな」
がツボです。