■やたらとくしゃみが出るので花粉症かと思っていたら喉が痛くなり、程なくして熱が出た。風邪薬飲んで一晩寝れば大丈夫だろう。と高を括っていたが、下がってもすぐに上がってくる質の悪い熱で、おまけに唾液を飲み込むだけで喉に激痛が走るようになった。
■ということで病院に行って来た。熱でやられて朦朧としていたので、受付に立つその姿は傍目から見ると老人ホームのおじいちゃんみたいだったはずだ。診てもらうと扁桃腺が化膿しているとのこと。はあそうですか。と答えたが、よくよく考えてみると怖い。子供の頃に怪我して膝に出来ていたあの化膿が喉の奥にある。怖い。
■にしても腹が立つのは体温計である。脇の下に挟んで10分以上経つのに計測終了の電子音が鳴らない。どうなってんだと引き上げてみると、依然として計測中である。なんだよ、と慌てて脇の下に戻した途端にピピッと鳴るのだ。ちゃんとやれ!機械相手だけに怒りのぶつけようがない。こんなことを一日に何度も繰り返すと、電子音が憎たらしくなってくる。この電子音め、電子音め、電子音、電子音、でんしおん、デンシオン、デンシオーン、デンシウォーーン!!敵か味方か分からない何かが登場しそうだったが何も起こらなかった。
■そんな訳で食事がまともに摂れないので点滴をしてもらう。熱でうーうー言いながらの点滴。途中で、「辛いなら座薬入れますか?」と聞かれた。楽になるならなんでもいい。縋るような気持ちで、お願いしますと答える。とは言うものの、他人に対して尻を見せることには少なからず抵抗があって、しかも白で統一された清潔感のある空間でどうして我が尻を出すことが出来よう。などと考えている間にぺろっとズボンをめくられた。前から思っていたのだが、座薬には解熱成分など含まれておらず、「他人の前で尻を出す」という無償のプライバシー開示の代償として熱が下がる仕組みになっているのだ。きっとそうだ。
■この記事を書いている時点で計4日間、熱の上下が続いている。具体的な温度は定かではないのだが、たしか40度以上の熱を出すと精子が死ぬという話を聞いたことがある。今回、自分が計った中で一番高温だったのが39.8度。ギリギリである。しかしこれがピークだとは断言できない。うなされている間に40度を超えていたかもしれないのだ。だから100万匹くらいは死んだだろうか。私は股間に向かって手を合わせた。チーン。座布団ぜんぶ持ってけ。
■点滴が長すぎる。2時間とは聞いていたが、どういうつもりか見渡せる範囲内に時計がひとつもない。それならと、点滴の残り具合を確認する。よく分からないが、あと15分もあれば終わるだろう。そう思っていたら、看護婦さんが来て、「まとはずれさーん、もうすぐ点滴終わりますからね」と言った。「えーと、そうね、あと40分くらい?」と半疑問の言葉を去り際に残して。点滴のチューブが刺さってる辺りに、はあーとため息をついたらファンヒーター並に熱くて驚いた。まだまだ熱は下がらない。
■病院に行って薬ももらったし、じきに回復するだろう。これは甘い考えだった。微熱程度まで下がり、調子に乗ってコメントの返信などしているとまた上がる。うんうん唸りながら必死で熱を下げ、今度こそはと微熱になっても布団の中で我慢していたがやっぱり上がる。ゾンビのような熱だ。あまりの苦しさに、いい加減にしてくれと何度か思った。これならいっそゾンビにでもなった方がマシだ。もうゾンビでもしてえ。とは思わなかった。
■部屋を暖かくすること。頭は水枕で冷やして濡れタオルは額に。布団も一枚多く掛けて暖めとにかく熱を出す。そして汗をかいたら冷えるから早く着替えること。……なんか熱くしたり冷やしたり面倒くさい。どうすりゃいいのさ。熱を下げるんだからシンプルに「冷やす」ってことだけじゃダメなのか?そんなことを、うなされながら考えていました。
■で、いまのところ熱が下がっているので、調子に乗ってこんな記事を書いています。こういうことはすぐに書かないと熱が冷めてしまうので。明日は、……どうなっていることでしょう。