あてこすり(改)


 
 えー、新聞によりますと今年一年を表す漢字は「偽」なんだそうで、牛肉やら和菓子やらハンバーガーやらドーナツやら白いお土産やら、えー、あとは何がありましたっけねえ、嘘偽りなくすべて教えてくださいな、てな具合に指折り数えるのも億劫なほどにたんまりと明るみに出たわけでありますが、酒好きの私としましては、なによりも鶏肉の偽装ってやつに眉を寄せた次第でありまして。

 「主人、燗でひとつ」
 「へい」
 「あと、盛り合わせね」
 「タレと塩、どちらで?」
 「そしたら半々で」
 「かしこまりました」
 「時に主人」
 「へえ、なんでしょう」
 「ここのはどこ産だい?」
 「えー、比内鶏でございます」
 「ぬぬ、まさか偽装じゃあるまいね」
 「そんなダンナ滅相もない」
 「近頃、疑り深くなってしょうがねえ」
 「へい、盛り合わせおまちどう」
 「たとえばこの、皮」
 「皮がどうしました?」
 「・・・主人の皮じゃあるまいね」
 「え?」
 「偽装してるんじゃあるまいね」
 「ダンナまたまた冗談を」
 「冗談なんか言わないね」
 「アタシ10年前に手術してますから」
 「ほう、どこで?」
 「高須でございます」
 「ほっ、定番だねえ」
 「レーザーでございます」
 「それじゃあさぞかし立派なムスコさんをお持ちだ」
 「へ、へえ」
 「いずれ風呂で拝ませてもらうからね」
 「へえ、いや、それが」
 「どうしたんだい?」
 「一人遊びが過ぎたのかまたまた伸びてしまいまして」
 「そりゃまたどうして?」
 「それがまったくモテませんで」
 「ありゃりゃ」
 「それで夜な夜な自分で独り占めを」
 「そりゃあ伸びるわけだ」
 「こればっかりはどうにも誤魔化せません」

これがホントの皮肉というわけで。

見られている


ねこ1

最近なんだか知らないがコタツの上に乗ってくる。
いままでこんなクセなかったのに。

それはともかく、
おおっぴらにエロサイト(STREET ANGELS)の閲覧が出来ない。
集中出来ないんだよ。あっち行ってくれ。

ねこ2

だけどまあ、かわいいから許すことにしよう。

ねこ3

そう思うと、突如、天井とか見上げたりする。
なんか、猫って、そういうところがあるよ。
見るなよ、なんか、怖いから。

スレスレ違いの路上


 閑散とした住宅街で業務遂行上やむなく路上駐車をしていたら、向こうからセダンって言うんですか? いわゆる一般的な車が近づいてきて、私の車の手前で止まったんです。運転手はコロッとした体型で大仏パーマっぽいのをあてた、いわゆる典型的な「ニッポンのおっかつぁん」だったんですけど、見渡せる限りの路上には私とおっかつぁんの車しかいなくて立ち往生する理由がないんです。だから私としても対処のしようがなかったんですが、ハンドルを握ったまま進行方向を真っ直ぐに捉えるおっかつぁんの視線から察するに、どうやら私の車とすれ違えるかどうか不安なようなんです。思わず、パーに開いた左手をグーの右手でポーンと叩いちゃいました。なーんだなるほどなるほどそういうことだったのか!

 って、おっかつぁん!
 どっからどう見ても通れる道幅で、スカスカっていうかガバガバっていうか、逆に接触するほうが難しいくらいの道幅だから、「大丈夫、行けますよ」っていう合図をしてもおっかつぁんは1ミリも動こうとしないし、ハンドルをがっちり握ったまま固まってるんです。メデューサによって石にされてるの? って思うくらいピクリともしないんです。埒が明かないので、私の車が前進して無事すれ違ったんですが、無意味な前進をさせられてどうにも釈然としませんでした。

 考えてみるとおっかつぁんてのは、自転車でも同じようなことをしますね。
 歩道を自転車同士ですれ違うことが怖いのか、超音波みたいなブレーキを鳴らして自転車を降りてしまうので、その体の分だけ歩道のスペースが狭くなってしまい、結果、対向の人も自転車を降りざるを得なくなるというのが、その事例のひとつです。だけどまあ、すれ違い能力の低下というのは老化に伴うものであって、致し方ないと思っております。

 それよりも聞いてください、自転車には苦い思い出があるんです。
 歩道を歩いていると「キャー、どいてくださーい!!!」という声がして、ハンドルをわなわな震わせた自転車が向こうからやってきたんです。その自転車の女性はとても太っていて転倒の恐れがあるため止まることが許されないようで、暴走機関車か、映画「スピード」に出てくるバスかなにかみたいに、道を空けるようにと懇願しながら走ってきたのですが、私がその叫びを聞いて目を上げたときにはすでに目と鼻の先の距離にいて、かといって歩道は逃げ場がないほど狭く、反射的に車道側へ避けたのですが、まあ状況としては、トップロープをさっそうと飛び越えてリングインするつもりがしくじって、ロープを軸にくるんと回転しながらリングに落ちてしまったレスラーの迷珍場面みたいに、私はガードレールを軸にくるんと車道へ転落してしまったんです。これで車に轢かれていたら迷珍場面の騒ぎじゃないわけで、目をバッテンにしてグーの右手を振りかざしながら頬を膨らませてコラー!! と自転車の女性に注意をしたのですが、道なき道を行くようにいろいろな人をなぎ倒しながら消えて行きました。今でも、うなされることがあります。

牛丼不信任案


 
 いまさらだし、みんな思ってるだろうからあんまり言いたかないけど、いま流れてる吉野家のCM、ありゃいけないね。見てるとそわそわするっていうか、ひやひやするっていうか、緊張する。ダメでしょCMで緊張させちゃ。だって食ってないんだもん。エア牛丼なんだもん。あるいは偽装食いなんだもん。ハムを牛肉って言い張るようなあっけらかんとした食ってなさ加減があるもん。エアとか偽装とか、なんだか図らずも今年の流行をいくつか取り入れてる感じになってるし。持ってる丼だってなんか、ちっちゃいし。どこ見て食ってんのか不明だし。あーもう、見てらんない!って気持ちになってくるから、口元にモザイクかけてもらったほうが精神衛生上、なんぼかいいよ。

 「もっと美味しそうに」。そういうダメ出しを言い出せない撮影現場の空気感がリアルに再現されたCMって、見たことないし斬新だけど、「食べてないよね?」って言えない空気が伝染したお茶の間の、あの変な感じをどうしてくれるの吉野家は。

http://www.youtube.com/watch?v=kXPWq4UiM08

こだわりシェフのきまぐれサラダ


 
 国道を走っていたらですね、『プロも絶賛<革命>卵』っていうコピーが書かれた車を見かけまして。まあ、革命的な卵みたいですけど、肝心の革命内容が書いてないんですね。そもそも「卵」と「革命」ってのが感覚的に結びつかないわけで。んー、あれですかね、ハイテクなんですかね。「落としても割れないセラミック殻!」みたいな。いやいや、割れてよ! って話だし、それを産んでる鶏にどんなエサ与えてるのか気になるし。そもそも「セラミック」=「ハイテク」っていう図式が古くさいし。じゃあアレですかね、「有機EL卵」。地デジ搭載でキレイ、鮮やか! ってすみません、yahoo!ニュースでサブリミナルされた単語をくっつけただけです。

 てな具合に気にしだすと運転がおろそかになってしまうんですが、もうひとつ気になったのは「プロ」って何? ってことなんですけど、「プロ」っていったら、うーん、何だろう、やっぱり棋士ですかね、そしたらやっぱりあの人ですかね。「羽生さん、革命卵の感想をひと言どうぞ」、「おいしいです、パチン!」ってそりゃそうです、将棋はプロでも、卵に関しては一般的な消費者ですものそれくらいしか言えないですし、宣伝としては何のアドバンテージにもならないわけです。あ、パチンてのは駒の音なんですけど。まあ、揚げ足取りするまでもなく、というか揚げ足取りましたけど、要するに「卵のプロ」ですよね、イコール「養鶏業者」ってことになるんですけど、まさかライバル業者の卵を絶賛するわけがないわけで、結論としては眉唾コピーだと。

 でもですよ、『こだわりシェフの』『行列の出来る』『昔ながらの』『屋台の』『ガンコ親父の』とかいう、なんとなくそれっぽいコピーを冠した大してウマくもない商品が日々、買い物かごに放り込まれてるってことは、『プロも絶賛<革命>卵』ってのも、レジを通る可能性があるわけで、方向性が違いますけど、例えば、例えばですよ、公園に、『プロも絶賛<革命>砂場』なんていう看板が立っていたらどうでしょう。砂場、大繁盛でしょうね、追っつかないでしょうね。おまけに、『鳥取直送の原材料から粒径200μmのものだけを厳選し均一な手触りを実現。また、砂鉄を7%配合し磁石好きのお子様にも配慮』なんていう解説があったら、砂場、埼京線並みの人口密度でしょうね、痴漢が出没したりして。

 たぶんですけど、きちんと商品名を見てないんでしょうね、見てても疑問を感じないんです、だから売れるんです。ということは、ということはですよ、それっぽい響きのコピーを持ってきても売れるんじゃないかと思うんですね、例えば、

 『おとなりさんちのこだわりカレー』
 『ふんわりやわらかコンソメスープ』
 『健壱なぎらのソースやきそば』
 『潮風をたっぷり受けたハヤシライス』
 『屋外のラーメン屋さん』
 『おさわりパブのクリームシチュー』
 『行列の出来る隠れ家居酒屋ガイドブック』

 このなかにも売れるのがある、間違いなくあるはずなんです。どのあたりまで脱線してもセーフなのか、そのボーダーラインが知りたいものです。