業務連絡012 アタシかかし


 
Subject:[業務連絡] アタシかかし
To:安達専務
Fm:まとはずれ

専務。
強烈な便意に襲われているので、
手短にご報告いたします。

近所の田んぼに案山子が設置されました。

 
anesan1

稲穂が頭を垂れるこの時期になると、
決まった案山子が登場するそうです。

会社のKさんの話によれば、
この界隈では有名な案山子で、
「アネさん」と呼ばれているとのこと。

 
anesan2

ちょっと。
どこから指摘してよいのか分かりませんが、
アネさん、いろいろと面倒なことになっています。

 
anesan3

右手の、うーん、
これは中指なのでしょうか。
「足、拾えや」
と言っているように見えます。

この有り様をみたKさん、
「今年のアネさんは特にひどい」
と言ってました。

昼間でも薄気味悪いんですから、
夜道で遭遇したら相当怖いはずです。

カラスも人も寄せつけないアネさん。
でも頑張ってアネさん。

 
anesan4

以上です。

☆☆☆☆☆
まとはずれ
☆☆☆☆☆

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Subject:Re:[業務連絡] アタシかかし
To:まとはずれ
Fm:安達

ひいっ!

安達

寝耳に風呂水


 
頭ごとざぶんと湯船に浸かったら、耳に侵入した水が出てこなくなった。いくら頭をぶんぶん振っても出てこない。片足ぴょんぴょんをしても出て来やしないし、ティッシュこよりのこちょこちょで吸い取ろうとしても出てこない。ぶんぶんぴょんぴょんこちょこちょと何度も何度もローテーションしたけど全くもって水は出てこない。ごわああぁん。これがプールとか海で入った水なら「だいじょうぶ? ちょっと見せて」なんて膝枕とかの想像も膨らむけど風呂水じゃダメだ。情緒ってものがない。浮かんでくるのは風呂水ワンダーだけだ。ごわわあぁん。素材サイトからダウンロードした掃除機の音源ファイルをipodに投入して大音量で聞いてみたりもしたけど耳の中の水は一向に出てこない。いったいどうやったら出てくんだよ! 振りすぎた頭が痛くて痛くて猛烈に頭に来たので「マンモグラフィーッ!」と声を殺して叫んで寝た。夜中のトイレに立ったら耳の中の水がなくなっていることに気が付いた。結局は寝るのが一番なのか。あ! と思い立ち、googleでマンモグラフィーの意味を調べてから眠りの続きをしようと思った。ごわわあんあん。
 

七三日記(0903)


 
■なんだか分からない講習会を受講するために東京へ。いろんな人とほぼ毎日飲んだ。むしろこちらがメインで臨んだ5日間。すごく楽しかった。ギリギリ夏の思い出に滑り込ませることができたような気がする。ただし、多少の問題点はあった。
■ある友人とメールで事前連絡を取った際、「美味しいお店知ってる?」と聞かれた。しかし、東京を離れた私には和民と白木屋の記憶しか残っていないのだった。googleで「美味しいお店」と入力したら200万件ヒットした。うーん。お店決定の主導権はぜひあちら側に握らせたい。どうしたものかと案を練っているうちに、試しにむずがゆいセリフでも言ってみるかと思い立って、「美味しい店? ○○ちゃんと一緒なら、なんだって美味しいよ」と返信してみた。送った後で、取り返しの付かないことをしてしまったような気がして恐ろしくなった。ほぼ丸一日後に返事が届いた。
■「んじゃ、なにが食べたい?」
■なるほど、無視か。向こうサイドがかさぶたにしたがっている傷を剥がしてなんになる。無難な返信をしようとしたが待てよ、これは試されている。「食べたいのは君だよ」というボケのためのネタ振りかもしれない。むむう、としばらく悩んだが加齢臭の漂いそうな高リスクの返信を思うと親指の震えが止まらなかったので、「じゃ、和風で」と返信しておいた。
■新宿のなんとかという店で、うまいのかどうか分からないクーポンのサービスワインを傾けながら、やわらかすぎる豆腐をつまんだりした。飲んでる途中でふと思い出し、「○○ちゃんと一緒なら、なんだって美味しいよって送ったのに・・・なっんのリアクションもねえのな!」と文句を言ったら、なぜか呼吸困難になるくらい笑い転げていた。

■別の友人とは当日に連絡を取った。「うまい店をよろしく」「場所はどこがいいの?」「いい店ならどこでも」というやりとり最後に、しばらく返信が途絶えた。いい店を探してくれているのだろう。私とは言えば、いい機会なので小難しい本を読むために喫茶店にこもっていた。にしても返信が遅すぎる。途絶えてから2時間。本にもとっくに飽きていた。催促のメールを送っても応答がない。・・・まさかコイツ!
■いそいで電話をかけようとしたら返信が届いた。「ごめん!渋谷で!」。十中八九寝ていたに違いない。本気で腹が立ったのでもう帰ってしまおうとさえ思ったのだが、顔をひくひくさせて待っていると「きゃー、ごめん!」などとのたまいながら近づいてきた。「まさか、寝てたんじゃねえだろうな!!??」と肘を小突くと、「なんかーお化粧してたら記憶を失っちゃったの」と言った。「それを寝るって言うんだよ!」

■雑。扱われ方がなんか雑な気がする。今回の2件でそう感じて、哀しい気分になった。哀しい川を翔けたくなった。

七三日記(0824)


 
■夏が終わってしまった。
■何をセンチメンタルな。と思うかもしれないが、夏生まれに見えない男グランプリ東北ブロックベスト16の夏生まれで夏大好き男の私が言うのだからちょっとは許して欲しい。
■何もない夏だった。海に行ってない、花火もしてない、ビアガーデンも行ってない、かき氷もすすってないし、なんのアバンチュールにも出会ってない。ただただ暑いだけの不甲斐ない夏。そんな夏に更新した文章を読み返してみると、これ、脳が沸騰してるというか、熱暴走というか。なんだか申し訳ない気分になった。
■何もない夏の締めくくりとして、中年男女の暑苦しい夏物語を書こうと思った。「純文学」などと大見得切ったサブタイトルまでつけたのだが、うまく書けなかった。

■ああ、本当に何もない。なんかしらあるだろうと思うのだがまるっきりゼロだ。あ、でもこんなことならあった。

■駅前を歩いていたら、背後から小さな女の子がタタタと走ってきて私の前方で振り返り「あっかんべー」をした。よもや自分に向けられているとは思わずキョロキョロ辺りを伺ったのだが、それらしき対象人物はいない。とりあえず私は女の子へ向かって中指を立てた。どうせ意味など分かるまい。それを見た女の子は再び走り出し、数メートル先でまた振り返って「あっかんべー」をした。中指を立てようと思ったら女の子はすでにどこかへ走り去って見えなくなってしまった。
■小さな女の子との小さなゆきずりだった。なんだかよく分からないがそう思った。どうせなら、おとなの女の子とゆきずりたかった。でもゆきずれなかった。……ああ、そういや、こんなこともあったっけ。

■運転手のWさんが「あっ」と指差す先を見ると、道路の真ん中で子犬がのたうち回っていた。さっきすれ違ったばかりのトラックが脳裏に浮かぶ。きっと轢かれたのだろう。ショッキングな光景に耐えきれず目を覆った。しかし、車を止めたWさんの「あれ?」に顔を上げてみると子犬はぴんぴんしていた。それどころか私たちに向かって「ワン!」と敵意のひと吠えまでしてみせた。結局の所、子犬は轢かれてのたうち回っていたのではなく、ぺしゃんこに干からびたヘビの死骸にじゃれていただけだったのだ。無邪気に。
■ちゃんと繋いでおけ。飼い主にそう言いたい。伝えたい。言付けしたい。伝言ゲームで伝えたい。矢文を射りたい。あ、そうそう、その帰りにガソリンスタンドで給油したときのこと。

■ものすごく丁寧な店員に出会った。「満タンでよろしいですか?」「吸い殻、ゴミなどございませんか?」などと丁寧な言葉使いで嫌み過ぎない笑顔の接客。見れば「見習い中」の腕章。ふてぶてしい態度の見習い店員が多いなか、久々に「ええやん」と感じた見所のある好青年だったのだが、帰り際に帽子を脱ぎデタラメな方向へ視線を向け、「あるつぉあーす!(ありがとうございます)」と言った。
■なんだよそれ。やけっぱちじゃねえかよ。最後で気を緩めるなら最初から緩んどいてほしいものだ。あ、あ、んだんだ、ガソリンスタンドついでに思い出したことがある。

■セルフのスタンドで給油していたら店員が近寄ってきて、うまい棒をくれた。めんたい味だった。「なんですか?」と聞くと「サービスです」。みんな暑さでアタマがどうかしてるんだろう。とりあえず、小さい声で「あるつぉあーす」と言ってみた。
■窓全開でうまい棒をかじりながら夕暮れの道路を飛ばしたら、夏の終わりの匂いがした。センチメンタルな気分に酔っていたら、匂いがどんどん強くなってきた。夏の終わりじゃなくて堆肥の匂いだった。急いで窓を閉めた。なんだかなあ、で夏が終わった。